1999 Fiscal Year Annual Research Report
隆起海棲生物殻化石を用いた南海トラフにおける海溝型巨大地震履歴の解明
Project/Area Number |
09680178
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
前杢 英明 広島大学, 学校教育学部, 助教授 (50222287)
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Keywords | 海岸隆起 / 海棲生物 / 南海トラフ / 巨大地震 / 海溝 / 完新区 / 地殻変動 / 室戸岬 |
Research Abstract |
本研究は,室戸岬に分布する石灰質生物殻化石を使って,南海トラフ付近で発生したすべての巨大地震の履歴について,5000年間以上にわたって切れ目無く復元することを目的としたものである.平成9・10年度は資料採取と堆積構造の分析と年代測定を中心に,研究を行った.平成11年度は,これまで得られた資料を基に化石群体の成長過程の分析を行った.標高9mと6.7mに分布する2つの化石群体において,化石群体成長の等時間面を復元した.これによって,標高9m付近では4500〜2700yrsBPにかけて,相対的に安定的な海水準の下で,化石群体が成長したことがわかった.標高6.7mに分布する化石群体は,2700〜1750yrsBPくらいまで海水準が安定していたが,その後1300yrsBPにかけて,徐々に海水準が低下した傾向が読みとれた.これらのことから,室戸岬はインタープレート地震とイントラプレート地震の組み合わせで隆起しており,後者の方がより累積的隆起に貢献していることが確認された.また,1988年の論文で推定した6回のイントラプレート地震は,本研究では,3回程度にまとめられ,ほぼ2000年に1回の割合で発生していると推定された.イントラプレート地震の震源断層については,今後の課題として残された.また,コアの堆積構造の解析中,ヤッコカンザシ以外に,生息深度が異なる石灰藻やサンゴが多数含まれていることがわかった.しかし,生物の属種分析には専門的知識と時間が必要なため,このことに関する詳細な分析は本研究課題では結論を出すことができなかった.これらの詳細が判明すれば,インタープレート地震の復元についても展望を開くことができる可能性があるため,新たな研究課題として今後取り組む予定である.
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