Research Abstract |
米国の経済教育プログラムを検討し,構成原理を導き出すとともに,その有効性と限界を明らかにして,日本の経済教育プログラム開発の基礎を確定した。概要は以下の通りである。 1. 米国の経済教育プログラムを主導する経済教育協議会(NCEE)は,1960年代に従来の実用経済教授を批判して,経済理論を教授する経済教育プログラムのDEEPを発足させた。 2. DEEPやNCEEの経済教育論には,経済理論より経済史教授の必要性,モラルや価値を扱う必要性など,主流派内部からも批判がある。NCEEは,1990年代にDEEPをEconomicsAmericaに移行させた。 3. DEEPの構成原理は,稀少性などの経済基本概念を基底として,市民的資質,意思決定能力を育成するものであり,EconomicsAmericaは,その構成原理を引き継ぎつつも,現代的問題やNCEEへの批判に対応したものである。 4. カリキュラム教材は,上記の経済概念教授を前提としつつも,経済原理教授型,実用経済教授型,経済史教授型,現代問題探求型に分けることができ,EconomicsAmerica以降,さらに多様性を深めている。 5. 教材の構成は,シミュレーションやロールプレイなどによる実感的理解を目指す構成と子ども自身が意思決定者として意思決定の練習が出来る構成となっており,多くの研究でそれらの有効性が実証されている。 6. 日本の経済教育プログラム開発の基礎を確定する上で,次の点に留意する必要がある。1)日本の経済教育で展開されていない経済理論教授の導入により,経済概念による推論能力を育成すること,2)その際,経済史教授との均衡を図ること,2)また,シミュレーションやロールプレイなどの作業体験的教材構成により実感を持たせること,意思決定能力が育成されるようモデルの習得やモデルを組み込んだ構成をすること。
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