1998 Fiscal Year Annual Research Report
特殊教育の授業における教師-生徒の会話への語用論的アプローチ-実践的介入の試みとデータベースの作成-
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09680251
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Research Institution | KANAZAWA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
大井 学 金沢大学, 教育学部, 教授 (70116911)
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Keywords | 会話 / 語用論 / 特殊教育 / 教師 / 行動問題 |
Research Abstract |
9年度に続いて、新たに17組の教師-生徒の会話への語用論の視点からの介入を行った。内訳は、盲学校1組、聾学校2組、養護学校14組である。これらの組に対して、会話のビデオ記録-研究実施者によるビデオテープ分析-再度の会話の記録-再度ビデオテープ分析-3回目の会話の記録-最終ビデオテープ分析という、9年度と同じ手順が実施された。ついで9年度介入実施分23組と合わせて計40組の会話について、ビデオ記録から介入過程をもっともよく代表する箇所を選び抜いた。それぞれの箇所について作成された文字転写資料に沿って、教師と生徒の各ターン毎に会話のプロセスを評価し、それと実際の介入における教師と研究実施者の討論との対応を整理した。このデータを、介入対象となった会話上の問題の分類(不均衡、崩壊)、介入の効果の判定(均衡の回復、崩壊の修復)、生徒の行動問題との関連の3つの視点から分析した。 得られた知見は以下の通り。1)少なくとも対象となった特殊学校のすべての教師と生徒の事例において、語用論的な介入によって改善が期待される会話上の問題が存在していた。2)介入により大多数の事例では、会話の不均衡の改善や崩壊の修復によって、生徒の自発的伝達が改善され、教師が自覚できるような相互理解が達成された。3)会話上の問題と直接・間接の関連が示唆される行動問題が、過半数の事例で見られ、直接的な関連の示唆されたものは、介入による会話の改善によって解決された。特殊学校における教師と生徒の会話の実態、それへの介入の意義と方法について、より広い範囲の研究が求められている。そこでの課題は、会話上の問題を生じるに至った、教師側に固有の要因、介入の効果を左右した要因、会話問題を記述する概念の洗練である。
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[Publications] 大井 学: "「普通の会話」ができる自閉症児の語用障害にかんする仮説の検討" 聴能言語学研究. 15・3. 172 (1998)
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[Publications] 大井 学: "コミュニケーションという謎(第6章:重い遅れと通じ合う身体)" ミネルヴァ書房(秦野悦子・やまだようこ編), 203(52-76) (1998)