1997 Fiscal Year Annual Research Report
コミュニケーションタスクの分類基準に関する学際的研究:認知負荷の観点より
Project/Area Number |
09680284
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
羽藤 由美 福井県立大学, 経済学部, 助教授 (50264677)
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Keywords | 英語教育 / 第2言語習得 / タスク / インタラクション / インプット / 注意 / 認知負荷 |
Research Abstract |
1.タスクを達成するためには、タスク遂行中の各時点で、特定の「意味」を伝達しなければならない。人の情報処理能力は有限であるから、この「意味」を産出することに向けられる「注意」の量が大きければ(学習者にかかる認知負荷量が大きければ)、産出する言語の「形態」に向けられる注意の量は少なくなる。2.会話中に言語形態に向けることができる「注意」の量が少いと、lexical-modeの(coding/decodingの際に、単語及び慣用句に依存する)コミュニケーションが誘発され、学習者は自分が発するアウトプット及びさらされるインプットを形態的に分析する余裕を持てない。3.タスクの認知負荷量を決定するのは、(1)利用できる内的・外的情報と、タスク達成のために産出されるべき「言語」との概念的距離(目の前にある情報及び記憶から容易に取り出せる情報を、言語によりどの程度抽象化しなければならないか)、(2)タスク遂行中の各時点で表現してよい「意味」の範囲、(3)遂行者が即座に利用できる語彙(外的に提示される語彙及び既に習得されている語彙)と、タスク達成のために伝達しなければならない「意味」を表現するために必要な語彙との隔たり、(4)textual cohesivenessを保つ(発話内で、明確な指示・照応関係を保つ)ことに、向けなければならない「注意」の量、などである。4.特定のタスクの認知負荷量を下げる(「意味」産出に費やされる「注意」の量を少なくする)方法は、(1)学習者が、タスク遂行中に必要となる情報処理の一部を、遂行前にしておけるような機械をもうける、(2)タスク達成のために必要な情報や語彙を外的に提供する、などである。来年度は、これらの研究成果を総合して、個々のタスクを遂行する際の学習者の言語使用の特徴と、その結果として起こる短期/長期的学習効果を、ある程度予測できるタスク分類の基準を模索したい。
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