1998 Fiscal Year Annual Research Report
社会システムにおけるジレンマ的状況と協力の可能性-安定集合による分析
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09680428
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
武藤 滋夫 東京工業大学, 大学院・社会理工学研究科, 教授 (50126330)
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Keywords | 社会的ジレンマ / 囚人のジレンマ / 協力 / ゲーム理論 / 安定集合 / 定常均衡 / パレート最適性 / 個人合理性 |
Research Abstract |
本年度の研究においては,昨年度の「囚人のジレンマ」,および「湖の汚染をめぐるジレンマ」に対する「逸脱の連鎖を考慮した安定集合」を用いた分析をより進展させ,以下の成果を得た. 1 n人囚人のジレンマ:主体の数が3人以上である囚人のジレンマ(社会的ジレンマ)における主体の行動を,逸脱の連鎖を考慮した安定集合を用いて分析した.得られた成果は以下の通りである.主体間の話し合いが許された状況では,たとえ話し合いの結果得られた取り決めに拘束力がなく,それから逸脱しても罰せられることがないとしても,協定から逸脱する主体が,その後他の主体も逸脱する可能性を考えるとすれば,すべての主体が自発的に逸脱せずそれを遵守するような協定が必ず存在すること,さらに,このような協定はパレート最適で個人合理的なものに限られること,を理論的に明らかにした.この結果は,多数の主体から成る囚人のジレンマにおいて,全員が協力行動をとるという協定が実現されれば,たとえそれが拘束力を持たないものであっても,誰もその協定から逸脱した行動をとることはなく,協定が自発的に守られることを示すものであり,特に,環境問題に対する国際的な取り決めなど,逸脱者を罰することが事実上不可能な場合においても,協定が実効性を持つ可能性を明らかにするものである。 2 2人囚人のジレンマの安定集合と定常的な均衡:昨年度の「2人の囚人のジレンマ」についての安定集合による分析結果と,2人の主体が交互に戦略を変えていくゲームの定常的な均衡による分析結果を比較し,前者による安定な状態が,後者の均衡状態とほぼ同じ結果を与えることを示した.この結果は,来年度計画している,安定集合の背後にある動的な主体間の動きを明らかにする一つの出発点と成るものである.
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[Publications] S.Muto and D.Okada: "Von Neumarm-Morqeustern Stable Sets in Cournot Competition" Economy and Economics. 37. 37-57 (1998)
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[Publications] A.Suzuki and S.Muto: "Farsighted Stability in Prisoner's Dilemma" VALDES Research Paper No.4,Tokyo Institute of Technology. (1998)
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[Publications] A.Suzuki and S.Muto: "Farsightedness leads to Efficiency in Duopoly Markets" VALDES Research Paper No.6,Tokyo Institute of Technology. (1998)