1998 Fiscal Year Annual Research Report
水田土壌中のメタン生成微生物生態系における鉄還元の位置と機能
Project/Area Number |
09680501
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
上木 厚子 山形大学, 農学部, 教授 (60143088)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
粕渕 辰昭 山形大学, 農学部, 教授 (00250960)
上木 勝司 山形大学, 農学部, 教授 (10111337)
|
Keywords | 温室効果 / メタン生成菌 / 水田土壌 / 嫌気性細菌 / 鉄還元細菌 / 水稲 / 2価鉄 / 湛水土壌 |
Research Abstract |
本研究では水田土壌中のメタン生成に関わる各種微生物の生理・生態と水田からのメタン放出との関係を明らかにするための一環として、メタン生成の主要な基質でもある酢酸塩やH_2を電子供与体として消費し、水田からのメタン放出を抑制する可能性のある湛水水田土壌中における微生物的鉄還元について検討し、以下の結果を得た。 水田土壌を出発材料とし、可溶性の鉄源としてFe(III)-Nitrilotriacetateを用い、酢酸塩、フマル酸塩等を電子供与体とする鉄還元細菌の集積培養を昨年度から継代してきている。このうち電子供与体としてH_2+フマル酸塩を用いて継代されて来た集積培養では、活発な鉄還元と,電子供与体の酸化が進行したため、この集積培養を用いて各種有機酸やアミノ酸、アルコール、H_2等の鉄還元への電子供与体としての利用性を調べた。 電子供与体無添加の培地に集積培養を接種しても鉄は還元されず、また、集積培養未接種の培地では、鉄は全く還元されなかった。このため、この集積培養においては鉄は完全に微生物的に、また添加した電子供与体を利用して還元されることが分かった。この集積培養ではH_2+フマル酸塩の他、H_2またはフマル酸塩のみを電子供与体として培養しても活発に鉄還元が進行し、鉄還元の進行に伴い白色の沈殿が生成された。この他、ギ酸塩、ピルビン酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、リンゴ酸塩等の有機酸、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩、セリン等のアミノ酸存在下でも鉄が還元された。このうち、H_2、フマル酸塩、ギ酸塩、ピルビン酸塩、乳酸塩、セリンなどで最も活発な鉄還元が進行し、多様な基質が鉄還元の電子供与体として消費される可能性が示された。しかし、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、エタノール等では鉄は還元されなかった。このH_2+フマル酸塩を電子供与体とする集積培養の他、酢酸塩や乳酸塩を電子供与体とするいくつかの集積培養から鉄還元細菌を分離してその鉄還元能を調べたが、一般に純粋培養ではどの菌株も増殖が微弱で、活発な鉄還元を示さなかった。
|
Research Products
(4 results)
-
[Publications] 野中 拓、上木厚子ら: "水田土壌中の嫌気性細菌…培養可能な嫌気性細菌数と好気性細菌数の各種培地における比較" 日本土壌肥料学会講演要旨集. 44. 40 (1998)
-
[Publications] 服部千晶、上木厚子ら: "水田土壌中におけるメタン生成活性(その4)…基質添加条件下における活性の季節変化" 日本土壌肥料学会講演要旨集. 44. 40 (1998)
-
[Publications] 上木厚子、野中拓ら: "無酸素および低酸素気相条件での水田土壌中の細菌の計数" 日本微生物生態学会講演要旨集. 14. 20 (1998)
-
[Publications] 佐藤敦哉、上木厚子ら: "水田土壌中の嫌気性細菌の生理的性質とその分子系統解析…水稲根および根圏土壌からの分離菌株について" 日本微生物生態学会講演要旨集. 14. 38 (1998)