1997 Fiscal Year Annual Research Report
硫黄の循環におけるCOS・DMS生成 メカニズムと動態解析の同位体化学的研究
Project/Area Number |
09680511
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
蟻川 芳子 日本女子大学, 理学部, 教授 (00060666)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今泉 幸子 日本女子大学, 理学部, 助手 (10247091)
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Keywords | 酸性雨 / 硫化カルボニル / 硫黄同位体組成 / 硫黄の循環 / 動態解析 / Tiobacillus thioparus |
Research Abstract |
本研究では、自然起源をもつ酸性雨発生の原因物質として近年注目されている硫化カルボニル(COS)の、環境中での挙動を解析する手段として、同位体化学的考察を試みた。COSは自然界では主に土壌中の有機チオシアン化合物から、微生物の作用により生成することが知られている。本研究では、COSの硫黄同位体組成についての基礎的情報を得るために次の実験を行い、それぞれの結果を得た。 1)化学反応により生成したCOSの硫黄同位体組成 チオシアン酸カリウムと硫酸の反応により生成したCOSをエタノールに吸収し、硫化銀を経て、二酸化硫黄として同位体比測定を行った。一方、基質としてのチオシアン酸カリウムについても、硫黄同位体比測定を行った。その結果、チオシアン酸カリウムとCOSの硫黄同位体組成は同一であり、化学反応による同位体分別は起こらないことが確認された。 2)微生物作用により生成したCOSの硫黄同位体組成 チオシアン酸カリウムを基質として、Tiobacillus thioparusによる加水分解で生成したCOSの同定および硫黄同位体比の測定を行った。Tiobacillus thioparusは、コ-クスの廃液を処理する活性汚泥からスクリーニングし、チオシアン酸カリウムで培養した。COSの同定をガスクロマトグラフィーで行ったところ、同物質であることが確認された。同位体比測定のため、生成したCOSは1)と同様にエタノールに吸収後、硫化銀を経て二酸化硫黄とした。しかし、微生物によるCOSの発生はppmオーダーであるため、同位体比測定に必要な硫化銀(〜15mg)を捕集するには数十回の反応を要するため、現段階では同位体比の測定には至っていない。あと数回の実験で結果が得られる予定である。
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