Research Abstract |
本研究では、PCBの薬物代謝酵素誘導効果発現における3-メチルスルホン(3-MeSO_2)代謝物の役割とその毒性を評価する目的で、健常人の肝臓及び脂肪組織、多数の野生ホ乳動物の組織中に比較的高濃度に蓄積が認められる2,2′,4,5,5′-pentachlorobiphenyl(pentaCB)(non-planar PCB)の3-及び4-MeSO_2誘導体、3,3´,4,4′-tetraCB(coplanar PCB)、2,3,3′,4,4′-pentaCB、2,3′,4,4′,5-penTACB及び2,3,3′,4,4′,5-hexaCB(mono-ortho-置換PCB)の2-及び3-MeSO_2誘導体を合成した。 既に、我々は、2,2′,4,5,5′-pentaCBの3-MeSO_2誘導体が、雄性ラットにおいて極めて強力なphenobarbital(PB)型の肝薬物代謝酵素誘導作用を有することを報告している。今回、2,2´4,5,5′-pentaCBを胆管カニュレーション処置及び抗生物質処置した雄性ラットに腹腔内投与し、この時の肝臓中3-MeSO_2濃度の変化及び酵素誘導効果との関係から、2,2´,4,5,5´-pentaCBの酵素誘導作用は、母化合物の作用ではなく、3-MeSO_2代謝物が作用本体となって起こることを明らかにした。 また、この3-MeSO_2誘導体は雌性ラットに対してもPB型誘導作用を示し、酵素誘導能には雌雄差がないこと、4-MeSO_2誘導体は雌においても酵素誘導を示さないことを明らかにした。この3-MeSO_2体は雌性ラットにおいても酵素誘導作用が著しく強いことから、雄性ラットの場合と同様に母化合物の酵素誘導作用に3-MeSO_2代謝物が関与していることが推察された。 一方、coplanar PCB及び3種類のmono-ortho-置換PCBの2-及び3-MeSO_2誘導体を投与すると、cytochromes P450、b_5量及びaminopyrine、benzo[a]pyrene代謝活性に対する増加割合は、non-planar PCB(PB型)の3-MeSO_2誘導体に比較してわずかであるか、それらの酵素活性に増加は認められなかった。このことから、coplanar PCB(3-MC型)及びmono-ortho-置換PCB(混合型)の薬物代謝酵素誘導作用には、そのMeSO_2代謝物の関与はないか、小さいことが示唆された。
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