1997 Fiscal Year Annual Research Report
S期特異的に発現する核蛋白質の新しい遺伝子の単離と放射線に対する応答に関する研究
Project/Area Number |
09680540
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
武藤 正弘 放射線医学総合研究所, 生物影響研究部, 研究員 (80166230)
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Keywords | Np95 / PCNA / 細胞周期 / Rb結合モチーフ / DNA複製 / モノクローナル抗体 / 染色体 / 修復 |
Research Abstract |
平成8年度までに、S期に発現する核蛋白質に特異的に反応するモノクローナル抗体(Th-10amAb)を使用して、λgt11発現ベクターに挿入されたcDNAライブラリーをスクリーニングし、この核タンパク質のcDNAを分離し、DNA塩基配列を決定した。ホモロジー検索の結果、これまで発表された遺伝子や蛋白と-致せず,新しい遺伝子であることが、明らかになった。この遺伝子産物は、95kDaの分子量を持つことが示され、Np95と名付けた。またNp95は、放射線発がん高発系B10系マウスでは前がん細胞の発生する時期に高発現することや、リンパ腫では細胞周期によらず異常発現する。また接触阻止の条件で発現が抑えられることが示された。 さらにNp95のOpen Reading Frameは、LXCXEやIXCXEというRb結合モチーフを持ち、S期に特異的に発現することから、平成9年度においては、Np95及びPCNA(proliferating cell nucIear antigen)の細胞内での局在や、Np95とRbとの結合実験を行った。抗Np95(Th-l0amAb)をFITC標識し、抗PCNA(PC10)をTexas Redで標識して、m5S細胞を二重染色して解析したところ、G1期及びS期において核内でNp95とPCNAの局在が、ドット状に一致して分布していることが示された。またmetaphase,anaphaseやcytokinesisの細胞分裂の各時期においても、Np95とPCNAが局在しており、染色体のまわりに結合している像が観察された。PCNAは、PolδによるDNA鎖合成反応の促進及びRFCのATPase活性の促進機能を持っており、DNA複製において重要な役割を果たしていると考えられている。またDNA損傷の除去修復や細胞周期の調節磯構などへの関与も報告されている。またGST-NP95融合蛋白質と細胞抽出液中のRbとのin vitroの結合実験から、Np95とRbとが相互作用することが示唆される予備的な結果が得られた。これらの結果から、Np95は、これらの核タンパク質と相互作用して、DNA複製、細胞周期及び修復に関与していることが示唆され、今後はNp95とRbとの結合部位の同定や、Np95遺伝子のターゲテイグベクターを作成し、ES細胞に導入して、ノックアウトマウスを作成し、Np95遺伝子の機能解析をさらに進める。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Muto,M.: "The characterization of the monoclonal Antibody Th-10a specific for a nuclear protein appearing in the S Phase of the cell cycle in normal thymocytes and its unregulated expression in lymphoma cell lines." Cell Prolif.,. 28,. 645-657 (1995)
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[Publications] Muto,M.: "Analysis of Early Initiating Event(s) in Radiation-Induced Thymic Lymphomagenesis" Jpn.J.Cancer Res.,. 87. 247-257 (1996)
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[Publications] Chen,Y.: "Cytogenetic analysis of thymocytes during early stages after irradiation in mice with different susceptibilities to radiation-induced lymphomagenesis." J.Radiat.Res.,. 37,. 267-276 (1996)
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[Publications] Araki,R.: "Nonsense mutation at Tyr-4046 in the DNA-dependent protein kinase catalytic subunit of severe combined immune deficiency mice." Proc.Natl.Acad.Sci.USA.94,. 2438-2443, (1997)
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[Publications] Kawai,H.,: "Isolation and characterization of apoptosis-resistant mutants from a radiosensitive mouse lymphoma cell line." Radiat.Res.149,. 41-51 (1998)
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[Publications] 武藤正弘: "放射線誘発胸腺リンパ腫の発生機構、-分子生物学的アプローチにむけて-" 放射線生物研究. 33(1). 60-78 (1998)