1998 Fiscal Year Annual Research Report
湖沼における車軸藻の消滅機構の解明と生息域外保全に関する研究
Project/Area Number |
09680561
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
渡辺 信 国立環境研究所, 生物圏環境部, 部長 (10132870)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野崎 久義 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (40250104)
野原 精一 国立環境研究所, 生物圏環境部, 室長 (60180767)
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Keywords | 車軸藻 / キヌフラスコモ / Nitella gracilens / 卵胞子膜 / 最終枝 / Nitella furcata / 津軽十二湖 / 十三湖 |
Research Abstract |
日本固有種であるキヌフラスコモ(Nitella gracikns Morioka)は、芦ノ湖、河口湖、野尻湖及び池田湖に生息していたが、近年はどの湖沼でも観察されることはなく、絶滅したのではないかと思われていた。今回の芦ノ湖の調査で採取してきた車軸藻の中から、本種を分離培養することができた。培養は2リットルのビーカーに400-600ml、容量の芦ノ湖沿岸の砂泥をいれ、蒸留水を加え砂泥一蒸留水総量で1.8リットルとなるようにした二相培地を作成し、20℃、200μW/cm^2の照度で、12時間明暗サイクル下でおこなった。培養された本種の形態を顕微鏡で観察した結果、本種の形態はMorioka(1941)による原記載と非常によく一致していた。成熟した卵胞子は黄褐色を呈し、卵胞子膜表面は円滑あるいは細かな粒状模様となっている。走査型電子顕微鏡観察においても、卵胞子膜表面が密に配列した微細な粒状構造であることが確認された。最終枝は2細胞からなっていることが確認された。本種についてはNitella furcata subsp.orientalisとする分類学者が存在するが、N.furcataの最終枝は1細胞であること、卵胞子膜表面が網目状であることから、N.gracilerlsはN.furcataとは違った種に位置づけるのが正しいことが判明した。また、津軽十二湖及び十三湖における車軸藻類調査をおこなった。津軽十二湖では1964年に調査され、カタシャジクモの生息が確認されていた八景ノ池には車軸藻類の生息は確認されなかった。放流されたコイにより捕食されたものと考えられた。鶏頭場ノ池の西岸にカタシャジクモが確認されただけで、他の池には車軸藻は生育していなかった。十三湖には車軸藻が確認されず、水質汚濁がその原因と考えられた。
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[Publications] Nozaki,H., Kodo,M., Miyaji,K., Kato,M., Watanabe,M.M.& Kasaki,H.: "Observations on the morphology and oospore wall ornamentation in culture of the rediscovered Japanese endemic Nitella graciliens(Charales,Chlorophyla)" Eur.J.Phycol.33. 357-359 (1998)