1998 Fiscal Year Annual Research Report
スルファチド結合タンパク質,ビトロネクチンの脳および疾患部位における機能
Project/Area Number |
09680585
|
Research Institution | GRADUATE SCHOOL OF HUMANITIES AND SCIENCES OCHANOMIZU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
小川 温子 お茶の水女子大学, 人間文化研究科, 助教授 (90143700)
|
Keywords | ビトロネクチン / スルファチド結合タンパク質 / 細胞外マトリックス(細胞間マトリックス、も可) / ヘモペキシン / β-エンドルフィン / 脳 / コラーゲン / コレステロール3。硫酸 |
Research Abstract |
ビトロネクチン(VN)は血液中や組織で血液凝固、線溶、免疫系、細胞の接着や移動など種々の生理的プロセスを調節する糖タンパク質である。本研究では、いまだ単離されていない脳VNを、ブタ脳組織中に検索し、構造やリガンド結合性を調べることを目的として、以下の項目を実施した。 1 脳VNの検索と精製 ブタ脳抽出液のイムノブロット分析より、分子量約60と40kDaの抗ブタ血清抗体陽性バンドが検出された。興味深いことに脳VNは非変性条件下でヘパリン結合性を示し、血清VNの精製法では精製できなかったので、脳抽出液から陰イオン交換-HPLCによって、分子量62kDaの抗体陽性物質を得た。この物質はレクチン反応性からN-結合型糖鎖が少なく、主にO-結合型糖鎖をもつことが示唆され、N-結合型糖鎖を主にもつブタ血清VNとは異なった。ウエスタンブロット後のリガンド結合試験から、HRP-ヘパリンのほかにβ-エンドルフィンにも結合性をもつことが明らかとなった。 遺伝子レベルでも、アルツハイマー病患者脳のcDNA発現ライブラリーから、抗ヒト血清VN抗体を用いたプラークハイブリダイゼーション法により脳VNの検索を行ない、抗体反応性をもつペプチドをコードする4つのクローンが得られた。 2 VNの酸性糖質脂質結合特異性 種々の酸性脂質に対する結合性をELISAならびにAFCにより調べた結果血漿VNがコンホメーション依存的にスルファチドに結合することを見いだし、動脈硬化などの病巣部位における両者の沈着機構との関連が考えられた。また硫酸化脂質、リン脂質にはいずれも結合が観測されたが、ガングリオシドには結合しなかった。さらに糖鎖の変化によりコラーゲンとコレステロール3-硫酸に対する結合が影響を受けることを見出した。 3 酸性糖脂質結合ドメインの特定 VNを構成する各ドメインならびにドメイン欠失ミュータントをそれぞれGST融合タンパク質として大腸菌に発現させ、ELISA法でリガンド結合ドメインを同定した。その結果、スルファチド結合活性は、ヘモペキシンIIおよびヘモペキシンIに存在した。脳VN精製にヘモペキシンドメインを利用することが有望と考えられた。
|
Research Products
(10 results)
-
[Publications] A.Yoneda,H.Ogawa,K.Kojima & I.Matsumoto: "Characterization of the ligand binding activities of vitronectin,Specificities toward various lipids and identification of the binding domains for various ligands・・・・" Biochemistry. 37巻18. 6351-6360 (1998)
-
[Publications] A.Yoneda,H.Ogawa 他2名: "Lipid-binding of plasma vitronectin and domain mutants." Glycoconj.J.14・suppl 1. S76 (1997)
-
[Publications] 米田敦子,小川 温子 他5名: "リコンビナント ビトロネクチンのリガンド結合性" 生化学. 69・7. 684-684 (1997)
-
[Publications] 田切 美緒,米田 敦子 他3名: "血漿ビトロネクチン及び大腸菌に発現させたレコンビナンドビトロネクチンの活性化機構" 生化学. 69・7. 684-684 (1997)
-
[Publications] 岩城はるひ,小川温子,他6名: "組織の再生、修復におけるビトロネクチンの糖鎖による活性調節" 生化学. 70・8. 895-895 (1998)
-
[Publications] H.Iwaki,A.Yoneda,S.Oda Tamai,ほか3名: "Vitronectin produced in regenerating and sham-operated rat liver showed enhanced collagen binding activity dueto the change of glycosylation." 4th CGGH Symposium:Frontiers in Matrix Biology,Abstracts. 35-35 (1998)
-
[Publications] A.Yoneda,H.Ogawa 他2名: Vitronectin binds to various lipids,collagen,β-endorphinand heparin via hemopexin domain 1 and 2. Avbstracts 4th CGGH Symposium. 34-34 (1998)
-
[Publications] 岩城はるひ,小川温子他7名: "細胞外マトリックス分子ビトロネクチンの糖鎖による活性調節-再生肝およびシャム手術ラットにおける組織の再生,修復との関わり-" 糖質シンポジウム要旨集. 29-29 (1998)
-
[Publications] 小川温子,他2名: "肝臓病学 Basic Hepatology" 医学書院, 904 (1998)
-
[Publications] 小川 温子 他2名: "ノックアウトマウス・データブック" 中山書店, 564 (1997)