1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09680593
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
片柳 克夫 広島大学, 理学部, 助教授 (20291479)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大前 英司 広島大学, 理学部, 助手 (30284152)
月向 邦彦 広島大学, 理学部, 教授 (10023467)
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Keywords | 時分割ラウエ法 / X線結晶構造解析 / 蛋白質の柔軟性 / 蛋白質変異体 / 白色X線 / 圧縮率 / DHFR / 動的構造 |
Research Abstract |
本研究ではジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)を題材に、蛋白質の柔軟性の機能に及ぼす効果を立体構造に基づいて研究している。最終的には時分割ラウエ法を用いた動的構造解析を目指しているが、1年目の本年度は、DHFRの各種変異体の立体構造の解明による柔軟性評価と、時分割ラウエ法実験の準備を行った。申請者が着任直後で結晶化や結晶解析の研究設備は全くなかったため、その環境構築もあわせて行った。本科研費により結晶観察に不可欠な偏光顕微鏡1式導入と、結晶構造解析計算を可能にするため研究室既設のワークステーションのハードディスク増設(9GB)を行った。DHFRの結晶化条件はBMCDなどのデータベースには登録されておらず、またKrautらの論文による方法でも再現性がないため、その条件探索に時間を要した。現在、2.0-2.5Å分解能(変異体の種類により異なる)の各種変異体結晶が得られ構造解析中である。昨年8月に本学部化学科の最先端共通機器である二次元検出器付X線回折計が使用可能になり、また高エネ研放射光施設のビームラインの課題申請は認可され、X線データの収集体制もほぼ整った。さらにラウエ法に不可欠な白色X線に対するDHFR結晶の耐久性も高エネ研で実際に実験し、回折点にストリークのない最適な結晶であることが判明。現在pHジャンプ法による本格的な測定系確立の研究を進めている。一方、変異体作成は67、121、145位の他これらを組み合わせた2重変異体も作成している。G67V変異体については構造解析が完了し、分子内部のキャビティ(空洞部)の大きさや分布の変化が分子全体にわたり見られ、圧縮率等による物性測定値とも一致している。この長距離相互作用の変化は、わずか1つのアミノ酸残基の置換が蛋白分子自体の活性や物性を変えることとよく対応しており、蛋白質立体構造構築原理の立場からも興味ある知見である。
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