1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09680593
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
片柳 克夫 広島大学, 理学部, 助教授 (20291479)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大前 英司 広島大学, 理学部, 助手 (30284152)
月向 邦彦 広島大学, 理学部, 教授 (10023467)
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Keywords | 時分割ラウエ法 / X線構造解析 / 蛋白質の柔軟性 / 蛋白質変異体 / 白色X線 / 圧縮率 / DHFR / 動的構造 |
Research Abstract |
本研究ではジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)を題材に、蛋白質の動的立体構造の解明を目指しているが2年目の今年度は、DHFRのラウエ時分割の成功には至らなかったが、蛋白質の柔軟性と立体構造の関係についてより具体的かつ明確な結論を得ることができた。昨年はG67V変異体で見られるキャビティ変化が溶液中の断熱圧縮率とよく対応することを見出したが、今回DHFRと葉酸の複合体の系について野生型、G67A、G67V、G67Lの各変異体を用いて2.1Åの高分解能データをそれぞれPFにて収集し結晶構造解析を行った。その結果キャビティ総和の変化と圧縮率変化についてこれら4つの順番が非常によく対応することが解った。一方キャビティの立体構造上の分布の変化が分子全体に及んでいることから、わずか1残基のアミノ酸置換の影響が分子全体に及んでいること(二重変異体の研究から得た遠距離相互作用の考えと一致)が明らかになった。この結果は、蛋白質の機能を立体構造から考える上で分子全体に視点を持つべきであるということと同時に、蛋白質の柔軟性が立体構造とともに大きな影響力を持つことを明らかに示している。また蛋白質の柔軟性(揺らぎ)を温度軸で評価するため、上記の変異体のうち最も分解能の高いG67A変異体について190Kと130Kの2つの低温温度で回折データの収集を行い、立体構造の変化と温度因子の変化を比較した。その結果、冷却により温度因子(ゆらぎ)は全体的には収まるが、その収まり方は決して一様ではなく特に分子周辺部の柔軟なループ領域で顕著であること、また反応時にシフトすると考えられているαCヘリックスは冷却してもなお揺らぎが減少しないことなどが新たに判明した。変異体の立体構造や低温構造から得られたこれらの動的構造の知見は、柔軟な分子表面を持つDHFRの時分割ラウエ法を行う上でも大変重要なものと考えられる。
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