1998 Fiscal Year Annual Research Report
生物的鉱物化における酸性および繊維性タンパク質の機能解析
Project/Area Number |
09680602
|
Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
宮下 知幸 近畿大学, 生物理工学部, 助教授 (60166171)
|
Keywords | 生物的鉱物化 / コンキオリン / 炭酸カルシウム / 真珠層 / アラレ石 |
Research Abstract |
貝の硬組織である真珠層と稜柱層は、結晶構造が異なる95%の炭酸カルシウム結晶と外套膜より分泌される5%の有機質から構成され、有機質構成タンパク質が硬組織形成を支配している。有機質構成タンパク質を大別するとEDTA可溶性の酸性タンパク質とEDTA不溶性のタンパク質に分類されるが、AP.Wheelerによると後者のタンパク質はさらに、アミノ酸構成が可溶性の酸性タンパク質に類似するものとグリシンとアラニンに富む繊維性タンパク質の二種に分類できると報告している。 本研究では真珠層と同様な結晶構造を持つアコヤ貝真珠の有機質のEDTA不溶性分画から尿素-EDTAで分子量15kDaのタンパク質(Conchiolin15)を抽出し、生化学的性質を調べた。また抗体を調製し、それをプローブとしてcDNAライブラリーから遺伝子のクローニングを行いアミノ酸の一次構造を決定したものである。このタンパク質は硫酸基を含む糖が結合している糖タンパク質であり、硫酸基の部分でカルシウムイオンと結合することが予想される。クローニングした遺伝子より解読したアミノ酸構成は、チロシンとシステインが多いことを除くと、EDTA可溶性分画の酸性タンパク質に類似しており、EDTA不溶性分画に存在する繊維性タンパク質とは全く異なっていた。当初、繊維性タンパク質と考えられたこの15kDaタンパク質は、AP.Wheelerのいう酸性タンパク質に類似するものであることか解かった。このタンパク質は有機質を構成する新しいクラスのタンパク質である。機能としては、1.シルクフィブロイン様の繊維性タンパク質とともに結晶形成が生じるための基盤構造を形成する、2.酸性タンパク質からなる有機質層とシルクフィブロイン様の繊維性タンパク質から構成される基盤構造とのアンカーとして働く、3.カルシウムと結合し、結晶形成を誘起する鋳型として働く、等が考えられる。 以上のことをまとめて、現在、論文を投稿中である。
|
Research Products
(1 results)