1998 Fiscal Year Annual Research Report
膜融合活性ペプチドの膜内会合ダイナミクス解明による融合開始機構の研究
Project/Area Number |
09680650
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
高橋 敞 京都大学, 化学研究所, 教授 (20022593)
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Keywords | リン脂質膜 / 合成ペプチド / 3-ニトロチロシン / 蛍光エネルギー移動 / 分子会合 / 膜融合 |
Research Abstract |
ある種のベプチドは生体膜の構造を擾乱し、人工膜小胞間での脂質混合、内容物の流出等を経て膜融合に至る.なぜある特定のペプチドが膜構造の擾乱を引き起こすかは膜内でのペプチドの挙動にかがっているはずであって、これを明らかにするためペプチドの会合状態を検出する実験を試みた.膜内でのペプチド会合には通常の分子量測定法など、直接会合数を知ることが出来ない.蛍光エネルギー移動の測定は現在それに対する唯一の方法と思われるが、これまで蛍光基として疎水性の高い大きな外来基が用いられ、それによってペプチド構造が乱されることが問題であった.これを避けるためにわれわれは3-ニトロチロシンを導入したペプチドを用い、トリプトファンから3-ニトロチロシンへの蛍光エネルギー移動を測定することによって両者の間の距離を評価することに成功した.例えばF3-3NO@@S22@@E2YというペプチドはpHを下げることによってランダムコイルからα-ヘリックスに転移し、それと共にトリプトファン蛍光が消光した.これはこの転移に伴って分子内トリプトファンと3-ニトロチロシン間の距離が短くなったことを反映したものである.またE5とW14-3NO@@S22@@E2Yという2種のペプチド混合物はpHの低下と共に分子間会合を起こすが、この時E5のトリプトファン蛍光がW14-3NO@@S22@@E2Yが存在することによる分子間蛍光エネルギー移動の為に消光されることが示された.このように3-ニトロチロシンの有用性が明らかになったので、膜中のペプチドにこれを応用した結果、ペプチド間会合状態はペプチドとして膜擾乱活性がある低pHにおいても中性の時とほぼ同様であることが示された.以前の研究からペプチドの膜内配尚も両条件でほとんど変化がないことが示されており、融合条件下でのペプチドの挙動は極めてデリケートなものであり、大幅な状態変化を伴なうようなものではないと結論せざるを得なくなった.
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Ozawa,S.: "Reconstituition of bacteriorhodopsin from a mixture of a proteinase V8 fragment and two synthetic peptides." Biochim.Biophys.Acta. 1294(2). 129-137 (1997)
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[Publications] Yoshimura,T.: "Formation of protein-and peptide-membrane assemblies and membrane fusion." Progr.Colloid Polymer Sci.106. 219-222 (1997)
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[Publications] Ishiguro,R.: "The relationship between the behavior of the α-helical peptide in phospholipid bilayer and its fusion activity." Colloids & Surfaces,Ser B,. 11. 153-165 (1998)
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[Publications] 石黒 亮: "生理活性ペプチドとモデル生体膜との相互作用の研究" JASCO Report. 39(2). 29-36 (1997)