1997 Fiscal Year Annual Research Report
骨格筋と平滑筋をつなぐもの:E-C coupling因子の進化
Project/Area Number |
09680663
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
筒井 泉雄 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 助手 (80202183)
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Keywords | E-C coupling / 膜内電荷移動 / DHP受容体 / Na / Ca交換輸送 / ユウレイボヤ / DICR / ウミタル / ナメクジウオ |
Research Abstract |
動物プランクトンにおける細胞内Caシグナリングに関与す細胞内オルガネラの発達と機能変化、筋収縮弛緩との相関機能の獲得と進化を解明する目的で特に重要な意味を持つSR、T管を中心として実験を行った。今回は得られている情報が少ないNa/Ca交換輸送系、E-C連関収縮機構の系統的な発生時期の解明をめざし、SR、T管をともにもつ海生プランクトンである原索動物、Oikopleura(オイコプレウラ)、矢虫類Sagitta(ヤムシ)、SRのみもつ、頭索類Branchiostoma(ナメクジウオ)、軟体動物Patinopecten(ホタテガイ)、T管のみ持つDiphys(フタツクラゲ)、T管もSRも欠いているSliphonophore(クラゲ)などの海生プランクトンを用いて実験を行った。SR、ERを欠いたプランクトンであるウミタル(Doliolum)は、筋収縮に対して細胞外からのCa流入が必須である。骨格筋の興奮収縮連関(E-C coupling)に関与する機構に働き細胞内Ca量やオルガネラからのCa放出を修飾するリアノジンはこの筋収縮と弛緩に関して全く影響を与えない。また同様に細胞膜の脱分極を感受して細胞内オルガネラからのCa放出を制御するDHP受容体の阻害剤も筋収縮、筋弛緩に影響を与えない。これより、骨格筋の興奮収縮連関に関与する機構は、細胞膜とオルガネラ(SR、T管)の相関においてのみ作動することが判明した。このときCaはNa/Ca交換輸送によってのみ細胞外へ排出されることも同時に判明した。細胞膜脱分極時に観測される電荷移動のうちジヒドロピリジン(DHP)感受性をもつ電荷移動が筋収縮に関する速いカルシウムシグナリングを担う情報変換機構である事が判明しているので、このDHP感受性電荷移動を指標にして実験をおこない、無脊椎動物では黄紋筋の収縮に細胞外からのCa流入が必須であること、またDHP受容体はL型Caチャネルとしてのみ機能していることを明らかにした。さらに上記の動物種のうち原索動物ユウレイボヤの体側筋と心筋、ホタテガイの横紋筋でcaffeine存在下に弱い脱分極依存敵収縮機構(DICR機構)が発現することを確認した(Tsutsui1996、Exp Biol年会発表)。また神経細胞でDICR機構を検索した結果、ザリガニ腹部神経節からも骨格筋様のDHP感受性電荷移動を発見した。このことから、速いカルシウムシグナリングが無顎類Lamprey(スナヤツメ)の骨格筋で突然変異的に発生したのではなく、筋(生物一般)に基本的に備わっていたDICRを介したE-C coupling機構(機能不全状態)が何らかの小規模な変化(遺伝的)をうけ機能的に作用するようになったことが判明した。
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