1997 Fiscal Year Annual Research Report
PEBP2βプロトオンコジン産物の、筋細胞分化における機能の解析
Project/Area Number |
09680684
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
渡邊 利雄 東北大学, 加齢医学研究所, 助教授 (60201208)
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Keywords | キメラ遺伝子 / 急性骨髄性白血病 / 細胞骨格 / ストレス・ファイバー / 免疫組織化学 / 転写因子 |
Research Abstract |
本年度において研究の飛躍的進展をみたのは、PEBP2βプロトオンコジンの活性化型であるキメラ遺伝子に関してである。ヒト急性骨髄性白血病の一型にみられる染色体逆位16(p13 ; q22)においては、PEBP2β遺伝子と平滑筋ミオシン重鎖(SMMHC)遺伝子との融合により、キメラ遺伝子が生成される。キメラ遺伝子によりコードされる蛋白のPEBP2β部分は、二量体を形成するPEBP2β転写因子のうちのDNA非結合性サブユニット、PEBP2βのアミノ酸配列に相当する。一方、キメラ蛋白のSMMHC部分は、平滑筋ミオシン重鎖分子のロッド・ドメインに相当する。キメラ蛋白は、白血病発症の活性化オンコジンとして作用すると考えられるが、その作用機構については未だ不明な点が多い。そこで本研究では、組織培養細胞にキメラcDNAをトランスフェクトすることにより、そのキメラ蛋白の細胞内局在について、及びその細胞骨格及び転写活性化能への影響について検討した。 cDNAをトランスフェクトした細胞の免疫組織染色により、キメラ蛋白は、細胞質との核の両方に局在することが判明した。しかも驚くべきことに、キメラ蛋白の発現により細胞形態の劇的な変化が引き起こされた。すなわち細胞は、長い細胞質突起を有し、全体が伸長した状態となった。そして形態変化をきたした細胞では、二重蛍光染色による観察の結果F-アクチンを含むストレス・ファイバーの崩壊が認められた。キメラ遺伝子からPEBP2β部分を欠如させた変異遺伝子やPEBP2β遺伝子自身を用いた実験から、形態学的変化をもたらすためには、キメラ蛋白のPEBP2β及びSMMHC両方のドメインが必要であることが示された。さらに、キメラ蛋白のほとんどが、細胞をディタ-ジェント処理したあとに残る細胞骨格画分中に保有されることも示された。一方、PEBP2β結合配列に依存した転写活性化能をキメラ蛋白が抑制することも、レポーター・プラスミドを用いた実験により、確かめられた。 以上により、PEBP2β-平滑筋ミオシン重鎖より成るキメラ蛋白は、ストレス・ファイバー及び転写活性化能の両者に対して二重の作用を有することが示された。そしてそれら2つの異なる作用は各々、キメラ蛋白の細胞質及び核内の局在に依存していると推定された。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Chiba,N.: "Differentiation dependent expression and distinct subcellular localization of the protooncogene product,PEBP2β/CBFβ,in muscle development." Oncogene. 14. 2543-2552 (1997)
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[Publications] Tanaka,Y.: "The protooncogene product,PEBP2β/CBFβ,is mainly located in the cytoplasm and has an affinity with cytoskeletal structures." Oncogene. 15. 677-683 (1997)