1997 Fiscal Year Annual Research Report
核蛋白質輸送における核膜孔ターゲティング複合体の役割
Project/Area Number |
09680692
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
今本 尚子 大阪大学, 医学部, 助手 (20202145)
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Keywords | 核タンパク質輸送 / 核局在化シグナル / 核膜孔 / 核膜孔ターゲティング複合体 / インポーティン |
Research Abstract |
核蛋白質輸送は、核蛋白質が細胞質で認識され、核膜孔にまで運搬される第一のステップと、エネルギーを利用して核膜孔を通過する第二のステップに大きく分けられる。私たちは、輸送の第一のステップにおいて、核蛋白質は細胞質で58kDa (PTAC58)と97kDa(PTAC97)の2つの因子と安定な複合体(核膜孔ターゲティング複合体;nuclear pore-targeting complex:PTAC)を形成してはじめて核膜孔にターゲットすることを明らかにし、この2つの因子の機能解析を進めてきた。PTAC58は、核蛋白質の核局在化シグナル(nuclear localization signal:NLS)を直接認識するNLS受容体として機能する。PTAC97はPTAC58と核膜孔複合体(NPC)構成因子の両方に結合することによって3者の複合体を核膜孔にターゲットする活性を有する。PTAC58とアミノ酸レベルで40-95%の相同性を示す蛋白質が異種及び同一種の生物で同定されており、NLS受容体が大きなファミリーを形成することが推察された。我々は、PT-PCR法を用いて、NLS受容体ファミリーと思われる3つのマウス遺伝子を新たに単離し、これまでに報告されているものも含めてマウスには少なくとも5つのNLS受容体が存在することを確認した。複数の異なるNLSを結合した基質を用いたin vitro核蛋白質輸送系での解析や、インターフェロン-_γの刺激に依存して核内に移行する転写因子Stat1の核蛋白質輸送の解析を通し、各NLS受容体が核蛋白質を認識する上で機能的に異なる性質を有することが明らかになってきた。PTAC97は、PTAC58ファミリー、NPC構成因子、及びRanといった輸送因子と相互作用しながら核蛋白質を核内に運搬するため、それぞれの因子と結合するPTAC97の分子領域を同定した。この情報をもとに、in vivo、及びin vitroの輸送実験系でPTAC97の挙動を調べたところ、PTAC97自身は単独で、Ranを必要とせずに核膜孔を通過する能力をもつ分子であり、その通過反応にはPTAC97のNPC構成因子と相互作用する領域のみを必要とすることが判明した。このことから、PTAC97は、核蛋白質の核膜孔へのターゲットのみならず、核膜孔通過を担う上で中心的な役割を果たす分子であることが判明した。核膜孔ターゲティング複合体を構成するNLS受容体ファミリー分子及びPTAC97の構造機能解析が進み、当初の研究目的は十分に達成できたと思われる。
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Research Products
(9 results)
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[Publications] Noriko Yasuhara: "Essential role of active nuclear transport in apoptosis" Genes to Cells. 2. 55-64 (1997)
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[Publications] Lyuji Tsuji: "Identification of novel homologues of mouse importin α,the α subunit of the nuclear pore-targeting complex,and their tissue-specific expression" FEBS Letters. 416. 30-34 (1997)
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[Publications] Yoichi Miyamoto: "Differential Modes of Nuclear Localization Signal (NLS) Recognition by Three Distinct Classes of NLS Receptors" THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY. 272・42. 26375-26381 (1997)
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[Publications] Toshihiro Sekimoto: "Extracellular signal-dependent nuclear import of Stat1 is mediated by nuclear pore-targeting complex formation with NPI-1,but not Rch1" The EMBO Journal. 16・23. 7067-7077 (1997)
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[Publications] Shingo Kose, Naoko Imamoto: "Ran-unassisted Nuclear Migration of a 97-kD Component of Nuclear Pore-targeting Complex" The Journal of Cell Biology. 139・4. 841-849 (1997)
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[Publications] Naoko Imamoto: "Nuclear Transport Factors-:Function,Behavior and Interaction" Journal of Histology. (in press).
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[Publications] Yoshihiro Yoneda: "MEMBRANE PROTEINS STRUCTURE,FUNCTION AND EXPRESSION CONTROL" Kyushu University Press(Japan),S.Karger AG(Switzerland), 8 (1997)
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[Publications] 今本尚子: "生化学" 日本生化学会誌, 11 (1997)
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[Publications] 今本尚子: "癌と化学療法" 癌と化学療法社, 6 (1997)