1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09680698
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
山田 守 山口大学, 農学部, 助教授 (30174741)
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Keywords | 大腸菌 / 細胞死 / 定常期 / SSnA / rpos |
Research Abstract |
申請者は大腸菌のゲノム解析を独自の方法で進め、増殖期から定常期への移行時におこる生菌数の大幅な減少に関与する遺伝子(ssnA)を発見した。また、この細胞死はrpoS変異で99%以上にも達することや、rpoS変異による細胞死の増加はssnA変異によって抑制されること、さらにはssnAは定常期に特異的に発現し、定常期に発現するRpoSによって負に調節されていることなどを見いだした。これらのことから、申請者はこの生菌数の減少がプログラムされており、定常期での安定な細砲の存続維持に必要と考えられる。本研究ではこの細胞死の分子機構を明らかにすることを目的として、SsnAの解析を中心に研究を進めている。平成9年度は以下の研究を行った。1)ssnAクローン株の形態:ssnAをマルチコピーのpBR322にクローン化した株を定常期まで培養し、アクリジンオレンジで染色後、蛍光顕微鏡下で観察した。ssnAクローン株の多くは細飽が溶け、断片化していた。また、生菌はコントロール株に較べ太く長くなっていた。このことから、ssnAクローン株は細胞分裂が抑制されていると推測された。ssnAやrpoS変異株の生菌はコントロール株とほとんど変わらなかった。2)SsnAの過剰発現と細胞内局在:ssnAをT7プロモーターの下流にクローン化し、SsnAを過剰生産させた。細胞を分画したところSsnAはインクルージョンボディーを作らず、細胞質に存在することが示された。3)SsnAの精製と抗体作製:DEAE-Toyopearlカラムクロマトグラフで精製した。HPLCによる解析から、SsnAは2量体で存在すると示唆された。ウサギを用いて精製SsnAに対するポリクローナル抗体を作製した。4)ssnA変異体の分離とSsnAの機能ドメイン:プラスミドクローンを用いてSsnAを過剰生産させ、生育抑制の起こらないものを多数分離し、ウエスタンブロットによってSsnA蛋白の存在と長さを確認した。変異部位の解析を行ったところ、多くはSsnAのC-未瑞に変異をもっていた。5)ssnAのホモログの探索:大腸菌のssnA遺伝子断片をプローブとして種々の細菌に対して、サザーンブロット解析を行った。サルモネラをはじめとした腸内細菌のいくつかで反応が見られた。大腸菌のssnA遺伝子DNAをもとにプライマーを作製し、種々の細菌のゲノムDNAを鋳型にPCRを行ったが、サルモネラ以外では遺伝子増幅は見られなかった。無細胞抽出液を調製し、大腸菌SsnA抗体を用いてウエスタンブロット解析を行ったところ、サルモネラ、シュードモナス、セラチア、バチルスなどに反応するバンドが見られた。以上の結果から、SsnAは細菌に広く分布するがDNA配列は大腸菌のものとかなり異なっていると予想された。6)SsnA過剰発現による生育抑制のサブレッサー検索:SsnAを過剰発現すると大幅な生育抑制が見られる。その生育抑制を解除するサブレッサーをトランスポゾンを用いて検索し、rseA(RpoEの負の活性調節因子遺伝子)ヘの揮入変異株を得た。RpoEのクローン化によっても抑制されが、RpoEはssnAの発現を抑制しなかった。以上のことから、RpoEはSsnAの作用を抑制するが、その機構はいまだ不明である。
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