1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09680710
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
前田 達哉 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教授 (90280627)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
畠山 昌則 (財)癌研究会, 癌研究所ウイルス腫瘍部, 部長(研究職) (40189551)
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Keywords | ras / GAP / 発癌 |
Research Abstract |
既知のrasGAPと高い相同性を有する新しい分子nGAPのcDNAをヒト心筋ライブラリーから単離し、解析を進めた。nGAPと線虫C.elegansのrasGAPであるGAP-2とは互いに高い相同性を有しているばかりでなく、いずれも触媒ドメインのC末端側にcoiled-coilを取ると予測される領域を持ち、nGAPは哺乳類のGAP-2相同蛋白質であると考えられる。また、最近哺乳類から単離されたシナプス特異的rasGAPであるSynGAPはnGAPとほぼ全長にわたり高い相同性を有しており、これらはrasGAPの同じサブファミリーに属していると考えられる。 nGAPはその構造からRas蛋白質に対するGAP活性を持つことが予想され、実際に出芽酵母のRas蛋白質に対してrasGAPとして機能し得ることを確認している。しかしながらGST-nGAP融合蛋白質を用いたinvitroの実験では、哺乳類Ras蛋白質に対するrasGAP活性を確認できなかった。そこで、nGAPがin vivoでrasGAP活性を示すか否かを、ras/MAPキナーゼ経路に対する抑制効果を指標に検討した。実験にはHeLa細胞またはCOS細胞を用い、血清刺激に応答したMAPキナーゼ(ERK2)の活性化を、SDSポリアクリルアミドケル電気泳動上の泳動度の変化としてウエスタン法により検出した。種々の実験条件を検討したが、nGAPの発現プラスミドをトランスフェクトしnGAPを高発現させた細胞でも、対照としてベクターのみをトランスフェクトした場合に比較して、MAPキナーゼの活性化に顕著な低下は認められなかった。nGAPのGAP活性の発現に何らかの条件ないし因子が必要であるか、nGAPがRasファミリーに属する他のGTP結合蛋白質に対するGAPであるという可能性が考えられる。今後、この両方の可能性を念頭に、nGAPの生理機能についてさらに検討を進める必要がある。
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