1998 Fiscal Year Annual Research Report
背側中胚葉誘導因子Smad2によるHNF-3βの発現制御機構の解析
Project/Area Number |
09680724
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
佐々木 洋 大阪大学, 細胞生体工学センター, 助手 (10211939)
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Keywords | 神経管底板 / HNF3β / エンハンサー / Gli / Sonic hedgehog |
Research Abstract |
脊椎動物の発生は、細胞間シグナル分子による組織間のコミュニケーションによって複雑に制御されており、シグナル伝達機構を明らかにすることが発生を理解する上で大切であると考えられる。これまで私は、オーガナイザー・脊索・神経管底板といった体軸中央組織の形成には転写囚子HNF3βが重要であることから、その遺伝子発現制御領域(エンハンサー)を解析してきた。本研究では、オーガナイザー/脊索及び神経管底板の形成は、それぞれアクチビン様シグナル及びSonic hedgehog(Shh)によって制御されている点に注目し、それらのシグナルによるHNF3βの発現制御機構を解析した。まず、アクチビン様シグナルの効果を培養細胞を用いて検討したが、HNF3βのオーガナイザー/脊索エンハンサーは、アクチビンシグナルおよびそのシグナル経路の下流に存在するSmad2のいずれにも反応しなかった。したがってHNF3βはアクチビン/Smad2の直接の標的ではなく、おそらく別の転写因子の発現誘導を介して間接的に制御されていると考えられた。一方、ShhシグナルはHNF3βを直接活性化することが示唆された。底板エンハンサー内には転写因子G1i1の結合配列を見いだしたが、その配列はエンハンサー活性に必須であり、かつShhシグナルとG1i1とによって活性化された。これらのことから、ShhシグナルはG1i1を介して伝えられ、標的遺伝子であるHNF3βを活性化することが示唆された。また、Shhは神経管底板の形成だけではなく、広く神経管や体節の腹側パターンの形成に働いていることが知られているが、Gli1もこれらの領域で発現しており、Gli1は広く一般にShhの標的遺伝子の誘導に関わっていると考えられた。今後Gli1の機能を解析することにより、Shhによる細胞間コミュニケーションの分子機構が明らかにされると期待される。
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Research Products
(1 results)