1997 Fiscal Year Annual Research Report
アデノウイルスベクターを用いたアミロイド蛋白質前駆体の機能と神経毒性に関する研究
Project/Area Number |
09680743
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
植月 太一 大阪大学, 蛋白質研究所, 助手 (20260309)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斎藤 泉 東京大学, 医科学研究所, 助教授 (70158913)
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Keywords | アデノウイルスベクター / アミロイド前駆体タンパク質 / ヒト胚性ガン細胞 / ラット海馬 |
Research Abstract |
本研究では遺伝子導入強制発現するベクターとしてアデノウイルスベクターを用い、in votro、in vivo条件下のニューロンに効率よく遺伝子導入する方法を確立し、その系を用いてアミロイド前駆体蛋白質(APP)のニューロンでの作用を研究した。 研究材料として全長型APP695を普遍的で強力なCAGプロモーターによって発現するアデノウイルスベクターを作製した。培養細胞としてヒト分化ニューロンに極めて近い性質を持つ胚性ガン細胞NTera2(NT2細胞)由来のニューロンを用いた。分化したNT2細胞にAPP発見アデノウイルスベクター感染後の形態変化を観察したところ、感染後2日目まででは変化は見られなかったが3日目から突起を縮退させ、細胞体も膨潤するなどの変性が観察された。さらに5日目になるとAPPを多量に発現して細胞内に蓄積しているニューロンでは突起の縮退、細胞表面の不整化などの変性像が認められた。 さらにラット脳内に直接アデノウイルスベクターを注入し高効率にニューロンに遺伝子導入する方法を検討した。その結果1M mannitolを含む緩衝液を用いた場合、等張液を用いた場合に比べニューロンへの導入効率が10倍以上高くなることを見いだした。そこで、この条件下でAPP発現ウイルスを感染させ強制発現実験をした。その結果ウイルス注入5日後にはAPPを多量に発現しているニューロンが変性していることを見いだした。変性ニューロンを電子顕微鏡によって観察したところ、軽度のクロマチン凝縮、自己消化像、変性ニューロン周辺のミクログリアの集結、シナプス終末部の膨大や消失、などの変性像が認められた。NT2細胞の場合もラット脳内ニューロンの場合も細胞内に全長型APPが蓄積していることが確認された。以上の結果から全長型APPの多量発現が神経変性をもたらすことが示された。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Tominag K, Uetsuki T, Ogura A, Yoshikawa K: "Glutamate responsiveness enhanced in neurons expressing amyloid precursor protein." Neuto Report. 8・8. 2067-2072 (1997)
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[Publications] Nishimura I, Uetsuki T, Dani SU, Ohsawa Y, Saito I, Okamura H, Uchiyama Y, Yoshikawa K: "Degeneration in vivo of rat hippocampal neurons by wild-type Alzheimer amyloid precursor protein overexpressed by adenovirus-mediated gene transfer." The Journal of Neuroscience. (in press). (1998)
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[Publications] 植月太一、 岡戸晴生、 鐘ケ江裕美、 斎藤泉、 吉川和明: "ウイルスベクターによる遺伝子導入と発現 アデノウイルスベクター系 ニューロサイエンス・ラボマニュアル・神経生物学のための遺伝子導入発現研究法" シュプリンガーフェアラーク東京, 60-82 (1997)
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[Publications] 植月太一: "胚性ガン細胞への遺伝子導入と発現 一過性遺伝子導入法 ニューロサイエンス・ラボマニュアル・神経生物学のための遺伝子導入発現研究法" シュプリンガーフェアラーク東京, 123-130 (1997)