1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09680752
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
杉本 哲夫 関西医科大学, 医学部, 教授 (90144352)
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Keywords | プリオン蛋白 / ノックアウトマウス / 脊髄白質 |
Research Abstract |
プリオン病宿主膜蛋白として知られるプリオン(PrP)蛋白は脳内に広く分布している。本 研究では正常型PrP蛋白の遺伝子欠損マウス(ホモ接合体)から得た脊髄組織を用いて、エポ ン包埋切片を作製。光顕・電顕観察を行った。対照には上記ノックアウトマウスの野生型とへ テロ接合体から得た組織を観察し、以下の結果を得た。 (1) ホモ接合体の脊髄エポン切片上に、脱髄と空胞変性を認めた。これら病理所見は脊髄白 質に主に出現した。脱髄所見は前・側・後索のいずれにも認められたが、空胞変性は後索に多 く集中した。 (2) ヘテロ接合体および野生型の脊髄エポン切片上には脱髄や空胞変性を認めず、その他と くに異常な形態変化は確認されなかった。 (3) ホモ接合体および対照動物の脊髄前索の領域において、有髄線維の大きさと数を計測し た。大きさの計測には外径を用い、最大直径と最小直径との平均値を有髄線維径とした。有髄 線維数は一定面積当りの本数を求めた。この密度はホモ接合体で有意な低下を示した。有髄線 維径は、ヘテロ接合体と野生型では0.5μmから11ないし12μmの範囲に分布し、とくに8μm 以上の大型線維は全体の10〜20%を占めた。一方、ホモ接合体では8μm以上の大型有髄線 維は認められなかった。 以上より、PrP蛋白遺伝子欠損動物では、脊髄白質に空胞変性と脱髄を生じること、脱髄に より大型有髄線維の脱落をきたすことが推定された。この結果は、PrP蛋白が脊髄の神経連絡 系においてその形態や機能を維持するために重要な役割を発揮していることを示唆している。
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[Publications] Katamine,S: "Impaired motor coodination in mice lacking prion protein." Cell Molec.Neurobiol.18・6. 731-742 (1998)
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[Publications] 杉本哲夫: "プリオン蛋白欠損動物の運動失調と脳・脊髄所見" 解剖学雑誌. 72・4. 322 (1997)