1998 Fiscal Year Annual Research Report
中世後期から近世の形而上学における〈存在の一義性〉の思考についての研究
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09710004
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
鈴木 泉 神戸大学, 文学部, 助教授 (50235933)
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Keywords | 存在の一義性 / 個体化 / 存在一神一論 / 存在の類比 / スピノザ / ドゥルーズ / スコトゥス / マルグランシュ |
Research Abstract |
中世後期から近世にかけての形而上学の歴史における〈存在の一義性〉の思考の意味と、それを通じてのスピノザ哲学の独自性を測定することを目的として研究を進め、次の知見を得た。 1.〈存在の一義性〉の思考の意味を明確にするために、現代においてこの思考の可能性を追求したジル・ドゥルーズの哲学を再検討し、〈存在の一義性〉の思考の核心を、存在・意味=形式・個体化の様態の三位一体としてモデル化した上で、モデルの核心として取り出された個体化の様態を巡る問題をドゥンス・スコトウス及びスピノザの理説と数学における微分論という二つの観点から解明し、さらにこのモデルがドゥルーズの『意味の論理学』における意味論と接合されるべきであることを明らかにして、モデルの一層の精緻化をはかった。2.それと平行して、ドゥンス・スコトゥスにおける〈存在の一義性〉の思考の意味を、 (スコトゥス的な)形而上学の形成との関係において明らかにする作業を、とりわけOrdinatioを素材に進め、形相的区別の理論と内在的様態の理説の解釈が争点となることを明らかにした。スコトゥスの議論と対抗関係にあるトマスにおける存在の類比の理説に関しては、その時期的な変遷に留意しながら大筋を把握するに至った。但し、研究の過程において、スコトゥスの議論とアヴィケンナの議論との関係の検討の必要性が強く意識されることになり、中世哲学における〈存在の一義性〉の問いの扱いを通時的に検討する作業を始めた。3.スピノザにおける〈存在の一義性〉の思考の持分とその意義を、この思考こそが、超越的な存在者としての神と他の存在者一般をつなぐ論理としての存在の類比の思考の崩壊を導き、存在-神-論としての形而上学と対抗関係となった、という作業仮説の検証という仕方で明らかにした。その際、特にマルブランシュの哲学との関係を新たに解明した。 1.に関しては、既に刊行された論文、及び刊行予定の論文においてその研究成果を公表した(する)が、2.に関しては研究内容の深化、及び、若干の変更に伴い、成果の公表に至っていない。3.に関しては、初期著作と『エチカ』との関係に関して現在論文を執筆中であり、またオランダのスコラ学者の理説との関係については2.の研究成果の公表の後に、その成果を取り入れつつ公表することになろう。中世哲学における〈存在の一義性〉の議論の展開を背景にしたスピノザの思考の位置測定が次の研究の主たる課題となる。
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[Publications] 鈴木 泉: "「『意味の論理学』を読むーー〈存在の一義性〉研究序説(2)ーー」" 『神戸大学文学部五十周年記念論集』. (刊行予定). (1999)
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[Publications] 湯川佳一郎: "『デカルト読本』" 法政大学出版局, 68-79 (1998)
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[Publications] 小林道夫: "『フランス哲学・思想事典』" 弘文堂, pp.23-25、p.29、p.61、pp.70-79、p.112、p.603 (1999)