1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09710005
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
望月 太郎 東海大学, 文明研究所, 助教授 (50239571)
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Keywords | メ-ヌ・ド・ビラン / 生命 / 人間学 / 生理学 / 機械論 / 生気論 / 形而上学 / 実証主義 |
Research Abstract |
今年度は、主としてメ-ヌ・ド・ビラン哲学の形成過程と先立つ科学思想との連関を詳らかにするため、ビランが批判的に受容した一八世紀〜一九世紀初頭の生理学に関する諸家の文献を調査し論点を整理した。BOERHAAVE(1668-1738),BARTHEZ(1734-1806),BICHAT(1771-1802),GALL(1758-1836)らのテキストを内外から集め、生命論に関して、機械論と生気論のそれぞれから、ビランがどのような主題に関してどんな考え方を受容し、どのような問題点を見いだし批判したのかを実証的に検証した。より具体的には、「二重の人間homo duplex」(BOERHAAVE)概念についてビランのそして当時一般的であったと思われる誤解、ニュートン主義的生理学(BARTHEZ,BICHAT)に対するビランの批判の主旨、骨相学的生理学[脳神経解剖・生理学](GALL)や実証主義との対立点と平行関係が明らかになった。人間学の理念を共有しつつも、方法論の相違に由来する人間生命の概念の差異が露である。 加えて、ビラニスム形成過程における「形而上学」概念の変容を追跡した。ビラニスムの形成は、伝統的形而上学(デカルト、ライプニッツ)批判に始まり、第一哲学に心理学を指定することによって成立し、実体存在の信憑を認める存在論をもって終わると概括されるが、この過程において「形而上学」概念がどのような外延と内包を伴って使用されたかは必ずしも明らかではなく、また実際そこには揺らぎが見られる。その輪郭を捉え振幅を確定することは、近代形而上学史の覆われた一面を明らかにするうえで重要である。 以上の研究について、年度末、概要をB・ベルッチ教授(ジュネ-ヴ大)に報告、研究レヴュ-を受けた。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 望月太郎: "フランス哲学における人間学の形成と自己知の変容-デカルト、ルラルジュ・ド・リニャック、メ-ヌ・ド・ビラン-" アルケ-(関西哲学会年報). 5. 163-175 (1997)
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[Publications] 中岡成文(編): "新・哲学講義3、知のパラドックス" 岩波書店, 220 (1998)