1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09710019
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中川 学 東北大学, 文学部, 講師 (60250651)
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Keywords | 天下触穢 |
Research Abstract |
本研究では、近世朝廷における「天下触穢」(以下、天下触穢と略す)思想について、次の二つの課題を設定した。その第一は、近世の天下触穢に関して、その朝廷内部における決定過程に着目しながら検討し、そこから天下触穢の近世的特質について明らかにすること、その第二は、第一の分析を前提として、天下触穢の思想的特質について明らかにすることである。 本年度には、まず関係史料を所蔵している諸機関(京都府立総合資料館、京都市歴史資料館、宮内庁書陵部、東京大学史料編纂所など)への史料調査を実施した。その調査においては、近世初期から中期にかけての(1)朝廷の国家的儀礼の担い手とされる神祗道家の記録類、(2)朝廷政治の政策決定過程に関与していたとされる公家(摂政・関白・武家伝奏・議奏など)の記録類に着目し、そこから天下触穢に関する記事を収集した。 これら関連記事の分析から得られた新知見は、次の通りである。近世の天下触穢がその要因によっていくつかの類型に分けられ、そのなかに近世に特有なものが成立していること、そしてこれら天下触穢の朝廷内における決定過程にもいくつかの変化がみられ、それが触穢観念の動向と関連があると見られること、などである。 次年度には、さらに調査・分析を進め、それら諸動向の社会的背景・歴史的意義を考察するとともに、近世朝廷における天下触穢思想の歴史的展開過程とその近世的特質とを具体的に解明することを目指したい。
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