1997 Fiscal Year Annual Research Report
日本の近世における老荘思想の受容と展開に関する研究
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09710022
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Research Institution | Obihiro Ohtani Junior College |
Principal Investigator |
大野 出 帯広大谷短期大学, 日本語日本文学科, 講師 (60247418)
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Keywords | 老荘思想 / 老子 / 老子註釈書 / 老子口義 / 林羅山 / 道春点 / 徳倉昌堅 / 老子経抄 |
Research Abstract |
1,日本の近世の特に前期において、老子註釈書として最も広く読まれていた『老子口義』の加点本について調査をした結果、同書の加点本は、以下のA〜Dの4系統に類別できることがわかった。 A,寛永4(1627)年刊、寛永6(1629)年刊、万治3(1660)年刊の『老子口義』の系統 B,正保4(1647)年刊、正保5(1648)年刊の『老子口義』の系統*訓点はA系統の『老子口義』の加点本とは異なり、道春(羅山)点とされるもの。 C,明暦3(1657)年刊の『老子口義』の系統:*訓点はB系統の『老子口義』の加点本と一致し、道春(羅山)点とされるもの。B系統の『老子口義』の加点本に頭註が増補されたもので、本文部分も含めて、版木は彫り改められている。 D,延宝2(1674)年の跋文をもち、徳倉昌堅の加点とされる『老子口義』の系統 2,『老子口義』の加点本は、上記の通りA〜Dの4系統に分類することができたが、C系統の林羅山の加点とされる『老子口義』とD系統の徳倉昌堅の加点とされる『老子口義』を比較対照研究した結果、D系統の『老子口義』加点本は実はC系統の『老子口義』加点本が改版されたものであることが判明した。すなわち、明暦3年に道春点として刊行されたものが、延宝2年には改版されて、徳倉昌堅の作として売り出されていたという事実が明らかになった。 3,『老子経抄』の著者考察のために、同書における引用文献の調査をした結果、その引用文献が上記C系統(およびD系統)の『老子口義』加点本の頭註と多くの部分で重なり合っているということが明らかになった。 尚、本年度、上記の研究成果の一部を、江戸町人研究会において発表した(論文発表は平成10年度を予定)。
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