1997 Fiscal Year Annual Research Report
クチャ地域の石窟寺院の壁画に表された供養・寄進者像の性格について
Project/Area Number |
09710032
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中河原 育子 名古屋大学, 文学部, 助手 (10262825)
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Keywords | トカラ語B / キジル石窟 / キジル第205窟王侯供養図 / クムトラ石窟 / シムシム石窟 / キジル第67窟 / キジルガハ石窟 |
Research Abstract |
9年度は主として、クチャ地域の石窟寺院のうち、キジル石窟、クムトラ石窟、キジルガハ石窟、スムスム石窟の四つの石窟寺院に描かれた供養者・寄進者像の網羅的な資料収集を行った。9年6月に一ヶ月実施調査を行い、寸法を測定し、またこれまで図像が知られていなかった幾つかを資料として加えることができた。従来から蓄積してきた資料と9年度の実施調査で得られた図像資料をコンピュータに入力、線図に描き起こす作業を行った。その成果は、古川総合資料館研究紀要第16号(1998年12月発刊予定)に寄稿する予定である。その中でシムシム石窟にこれまで注目されてこなかった新しい文字資料が存在することを実地の調査で確認し、新彊亀茲石窟研究所とトカラ語の専門家に研究を委ねることとなった。この文字は、当窟を1906年に調査したグリュンヴェーデルの報告においてブラフミ-文字の銘文とだけ記されていたもので、言語や内容については全く不明であったものである。この解読が進めば、寄進の構造が明らかとなり、研究の成果が待たれる。 研究代表者は専ら、蓄積された画像資料について、服制、装飾モティーフの観点から分析し、アフラシア-ブやピヤジケント等の旧ソ連領中央アジアの壁画や、敦煌、河北、山東省の石窟寺院の北斉から初唐時代にかけての供養者図像との比較研究を進行中である。また、漢文資料及びキジル第67窟から出土した寄進文書にあたり、キジルの6世紀後半から7世紀半ばまでのクチャの王家の歴史を復元することを試みている。クチャ地域の多くの供養者像はこの時期の王家の宗教活動と密接に関わっていることがおおよその見通しとしてつけることができた。
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