1997 Fiscal Year Annual Research Report
江戸時代<庭園画>の成立と展開-大名文化と博物学の視点から-
Project/Area Number |
09710034
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
今橋 理子 東海大学, 文学部, 講師 (70266352)
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Keywords | 大名庭園 / 江戸時代絵画 / 博物学 / 大名文化 / 庭園画 / 狩野派 / 絵画と文学 / 紀行文学 |
Research Abstract |
本年度は、日本各地に残された江戸時代「庭園画」について、網羅的な所在調査を中心に行なった。その調査の結果、1690〜1700年代にかけて柳沢吉保によって築かれた六義園を、狩野常信が中心になって描いた「六義園図巻」三巻の存在をはじめとして、今日遺存する大名庭園画の多くから、その発生は少なくとも18世紀初頭であることが間違いないと思われ、またもともとは、実際の庭園の景観を写生し絵画化する以上に、伝統的(大和絵的)な「名所絵」の手法によるきわめて観念的な風景図として作成されることが多かったことが、除々に明らかになってきた。大名庭園画の作例にはこうしたいわゆる<風景図>に分類されるもののほかに、庭園全体を俯瞰的に見渡した<見取り図>も存在する。後者のような<絵地図>に関しては、従来では美術品と見做すことはあまり例がない。しかしこうした<絵地図>は多くの場合、前者の<風景図>と密接な形で保存されていたり、あるいは<風景図>と<絵地図>の双方の描写が同時に画面上に現れている場合もあるので、単純に区別することができない。平成10年度では、作品所在に関する調査を継続する予定であるが、上記の点がより明確化してきた場合には、調査対象を大名屋敷の計測図や見取り図まで広げ、比較検証したいと考えている。さらに大名庭園が大名たちにとって文学(和歌・俳諧)の重要な創作場所であった背景を踏まえ、ではいかに<庭園画>が彼らの文学創作と関わっていたかについても検証した。その結果、庭園や<庭園画>が、詩歌だけでなく<紀行>文学を生み出す装置ともなり得ていたことが判明した。これについてもさらに複数の例証をあげるべくなお検証中だが、中間報告として雑誌『IS』に論文「旅する庭--大名庭園の<画>と<紀行>」としてその一部を発表した。
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[Publications] 今橋理子: "「旅する庭-大名庭園の<画>と<紀行>」" ポーラ文化研究所刊『IS』(イズ). 77. 36-41 (1997)
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[Publications] 今橋理子: "『絵画と文学の出会う場所』(仮題)" 東京大学出版会(予定), 380 (1998)