1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09710036
|
Research Institution | Kyoto National Museum |
Principal Investigator |
尾野 善裕 京都国立博物館, 文部技官 (40280531)
|
Keywords | 色彩分析 / 緑釉陶器 / 品質感覚 |
Research Abstract |
研究費交付申請時には、美濃窯産桃山陶磁と平安時代の緑釉陶器を対象とする計画であったが、交付額が申請額をかなり下回ったため、今年度は比較的近場で多くのデータ、収集が可能な緑釉陶器に限ることとし、既に70件あまりの釉薬および胎土の色彩計測データを収集した。しかし、収集したデータには時期的・地域的な偏りがあるため、色彩の差が時期的なものであるのか、品質の差であるのかを見極めることができていない。したがって、当初の研究目的である品質感覚の差の抽出には、さらにデータの収集が必要であると考えている。今年度は、研究を進める上で必要不可欠な色彩分析装とその周辺機器の購入に交付額の多くを当てざるをえなかったが、既に必要機材は揃っているため平成10年度は研究費をデータ収集に重点的に充当したいと考えている。 上記のように、当初計画段階での目的に沿った研究成果を上げるためには、さらに調査の継続が必要であるが、これまでの調査で、副次的にえられた新たな知見について以下記す。 この研究のポイントは、色彩を定量的に分析することによって、客観的データに基づいて品質感を論ずることにあるが、色彩分析装置を使う他に、色見本を用いて肉眼による色彩の定量化も試みてみた。その結果、色見本を用いた肉眼観察の方が常に一定の幅で色を明るく認識しているらしいことが判明した。この原因については、まだ充分に解明できていないが、色見本を用いた肉眼観察の定量データと色彩分析装置による計測データの換算式をつくることができる可能性がある。これができれば、既に公表されている色見本を用いた肉眼観察のデータをも取り込むことができ、本研究を多量のデータに基づいた信頼度の高いものとすることができると考えている。
|