1997 Fiscal Year Annual Research Report
星曼茶羅の調査研究-北斗曼茶羅の成立と展開について-
Project/Area Number |
09710037
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Research Institution | Osaka Municipal Museum of Art |
Principal Investigator |
松浦 清 大阪市立博物館, 学芸課, 学芸員 (70192333)
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Keywords | 星曼茶羅 / 北斗曼茶羅 / 東寺宝菩提院 / 絹裏 / 梵字墨書 / 二十八宿 / 図像 |
Research Abstract |
研究課題について、今年度は大阪市立博物館所蔵の北斗曼茶羅と関連資料との図像比較の検討を中心に調査をおこなった。大阪市立博物館本は東寺宝菩提院旧蔵本で、南北朝時代の制作と考えられる作品であり、宮内庁三の丸尚蔵館本と図像的に共通する部分が多い。 大阪市立博物館本の図像や技法に関する概要は、松浦清「東寺宝菩提院旧蔵北斗曼茶羅について」(大阪市立博物館研究紀要第29冊、平成9年3月)にまとめている。そこでも触れているが、当該資料の画絹の裏には墨書の痕跡が予想されており、表装を解体して修理する機会が望まれていた。幸い今年度、当博物館予算で解体修理することとなり、それに伴い、予想通り絹裏に墨書の存在することが確認されたため、肌裏を上げる作業の途中ではあったが、絹裏からの写真撮影をおこなった。その墨書の大部分は真言陀羅尼とみられる細かな梵字であるが、当初の予想をはるかに超える分量であり、内容の検討には相当の時間を要するものと考えられる。その詳細は来年度の精査で明らかにしたい。 北斗曼茶羅の絹裏に墨書が存在する作品は、管見では現在のところ類例がないと思われる。また、第三院の二十八宿については、その外周に漢字で角、亢、…と各宿の名称が記されていることも明らかになり、二十八宿星の尊名比定に根拠を与える作品であるといえる。梵字墨書の内容の検討はこれからであるが、本図は絹裏に墨書を残す重要作品であることが再確認されたことは大きな成果であり、北斗曼茶羅の展開を考える際の基準作のひとつとして今後さらに注目すべき作品であることが明確になったと思われる。
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