1997 Fiscal Year Annual Research Report
匂いによる異種感覚記憶の統合への影響に関する行動学的分析
Project/Area Number |
09710039
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
上野 吉一 北海道大学, 実験生物センター, 助手 (40261359)
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Keywords | 弁別課題 / 嗅覚手掛り / 視覚手掛り / 霊長類 / 種間比較 / 記憶 |
Research Abstract |
一般に匂いへの依存度が低いと考えられている霊長類において、匂いによる記憶の賦活化への影響を考えるための基礎データとして、食物選択場面における嗅覚・視覚手掛かりへの依存度を種間で検討した。対象には、原猿としてチャイロキツネザル(Eulemur fulvus)とクロキツネザル(Eulemur macaco)、新世界ザルとしてフサオマキザル(Cebus apella)、旧世界ザルとしてカニクイザル(Macaca fascicularis)類人猿としてチンパンジー(Pan troglodytes)を用いた。手続きとしてはゼリーフード・テストを用い、食物の弁別刺激としての視覚手掛かり(色ないし形)と嗅覚手掛かり(匂い)への依存度をそれぞれ比較した。本研究では以下のような結果が得られた。1)キツネザルの場合、いずれの種においても匂い手掛かりへの依存度が高く、視覚手掛かりはほとんど用いられなかった。フサオマキザルやカニクイザルは接近する段階では色を手掛かりとしたが、最終的に口に入れる段階では匂いへ大きく依存していた。チンパンジーは、個体により匂い手掛かりへ依存するものと視覚手掛かり(特に色)へ依存するものに分かれたが、個体内では一貫していた。2)いずれの種においても、本研究で用いた弁別課題はわずかな試行数で獲得された。特にチンパンジーでは、1試行で学習は成立し、またそれは3ケ月後にも維持されていた。以上のことから、霊長類においても外界を認識する手掛かりとして匂いが使われており、さらにそうした手掛かりに関する記憶は長期間維持されることが明らかになった。今後さらに、こうした嗅覚手掛かりによる他の感覚記憶への影響について検討を進めていく予定である。
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