1997 Fiscal Year Annual Research Report
自閉症児および健常児の自己の知識とその由来の理解について
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09710047
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
小松 美加 (内藤 美加) 上越教育大学, 学校教育学部, 助教授 (00212077)
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Keywords | 心の理論 / 自閉症 / 誤信念 / 前頭葉機能 / 中枢統合系 |
Research Abstract |
本年度は,まず,自閉症児が示す心的表象を理解する能力(これを「心の理論」と呼んでいる)の障害についての神経心理的諸研究の展望を行った。最近の自閉症をめぐる神経心理学では,同等の言語的知能水準にある健常児や知的障害児などの対照群に比べて,自閉症児は他者の誤った信念(誤信念),正しい信念(知識),驚きや当惑などの認知的感情,ふり,だまし,欲求と意図など,特に自分の心的状態とは異なる他者の心的状態を推測し理解する能力に障害を示す実証的研究が提出されてきていることを紹介した。さらに,たとえ1次的な誤信念(例えば,“太郎は‘花子が北海道にいる'と信じている")の理解が可能な自閉症児でも,2次の誤信念(例えば“私(花子)は,太郎が‘花子は北海道にいる'と信じている,と知っている")は理解できないことや,暗喩や皮肉に代表される高次の対人的コミュニケーションが困難であることを報告している研究を紹介した。そして神経心理学的には,こうした自閉症の障害が,心の理論の障害仮説以外にも,前頭葉機能の障害説,発達初期の対人的関係性の形成に関わる障害説,および中枢統合系の障害説などからも説明されていることを展望し,これらの諸説の理論的長所と短所および相互関係を整理して,今後の研究の方向性を示唆した。以上のような研究の展望に基づき,本年度はさらに,自閉症児の「心の理論」と能動文・受動文の理解との関係や,「心の理論」と時空間を定位する自己に関わる記憶や知識の情報源の理解との関係などについての研究計画を立案し,予備実験を行った。
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