1998 Fiscal Year Annual Research Report
ラットを用いた記憶モデルによる脳内コリン作動性神経系の機能の解析
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09710058
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
筒井 雄二 福島大学, 生涯学習教育研究センター, 助教授 (70286243)
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Keywords | 短期記憶 / 長期記憶 / 継時見本合わせ課題 / 前脳基底部 / 内側中隔野 / コリン作動性神経 / ラット |
Research Abstract |
昨年度に引き続き,ラットの継時見本合わせ課題を用いて脳内コリン作動性神経と記憶機能との関連性を調べた.脳内コリン作動性神経には主として2つの経路が存在する.1つは内側中隔野から海馬に投射する経路(中隔-海馬系)で,もう1つは前脳基底部から大脳皮質に投射する経路(皮質系)である.昨年度は中隔-海馬系と記憶機能との関係について調べ,この経路が視覚情報の短期記憶とかかわっていることを明らかにした.今年度は皮質系と記憶機能との関係について調べた. 継時見本合わせ課題(詳細は平成9年度研究実績報告書を参照されたい)をラットに訓練し,この課題を習得したラットを被験体として用いた.被験体の半数に前脳基底部破壊手術を施し(nBM群),残りの半数に偽手術を施した(Sham群).NBM群では,手術後,最長で14日間,摂食行動の著しい減少が認められたので,摂食行動の回復をまってから継時見本合わせ課題を再開した.実験の結果,手術前にはすべてのラットが継時見本合わせ課題を遂行することができたにもかかわらず,nBMを破壊したラットでは同課題の遂行成績が著しく低下した.そこで,手術前と同様の方法で継時見本合わせ課題の再学習を試みたが,nBMを破壊したラットでは再学習が困難であった. 以上の結果から,nBM破壊によって(1)以前に学習した課題のルールや課題遂行にかかわる記憶が消失した可能性,(2)それらの記憶に問題はないが,記憶情報を取り出す(検索する)ことができなくなった可能性,(3)新たな情報を長期記憶に転送することが困難になった可能性が考えられた.これらのことは,皮質系コリン神経が長期記憶における情報の貯蔵,検索,あるいは短期記憶から長期記憶への情報の転送に関与する経路であることを示唆する.
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