1997 Fiscal Year Annual Research Report
阪神大震災における大被害分譲マンション復興過程の全貌
Project/Area Number |
09710066
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
永田 素彦 北海道大学, 文学部, 助手 (60271706)
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Keywords | 阪神大震災 / 災害 / 分譲マンション / コンフリクト / 合意形成 |
Research Abstract |
平成9年度は、阪神大震災で大被害を受けた分譲マンション41棟を対象とした実態調査を行った。それぞれの復興過程を5パターンに類型化したところ、絶対建替(被害甚大で建て替えざるを得ない)が3棟、早期解体(住民の意見が建替で一致、建替決議前に解体着工)が10棟、建替一枚岩(住民の意見が建替で一致)が8棟、補修一枚岩(住民の意見が補修で一致)が13棟、建替か補修かをめぐる住民間コンフリクトが顕在したケースは7棟であった。つまり、多くのマンションでは、被災から復興まで、住民の意見はほぼ一枚岩であって、いかに建替や補修を実現するかということが焦点となっていた。そして、建替と補修のどちらを選択するかは、かなりの程度、被害程度に依存していた。具体的には、1戸当たりの補修見積金額が300万円以下なら補修、それ以上なら建替を選択するケースが多かった。一方、コンフリクトの生起には、主に2つのパターンがあることが明らかになった。第1は、当初は建替方向で意見が一致していたが、既存不適格問題、資金調達問題などで建替計画が行き詰まり、補修方向に方針転換したケースであり、第2は当初から建替か補修かをめぐって住民間に対立が顕在しているケースである。後者の復興過程について詳細に調べた結果、復興手段を決める上での客観的指標と目される被害程度自体、住民をはじめとする関係者たちの合意形式の産物としての社会的現実であること、そこに齟齬がある場合に解決が著しく困難な対立の構図が現れてしまうことが、見出された。
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