Research Abstract |
小学校卒業までの自閉性障害児及びその関連障害児を対象とするボランティアグループ「土曜学級」を卒業した対象児者とその家族,元ボランティアに呼びかけ,思春期・青年期にある自閉性障害者及びその関連障害者のグループ「土学クラブ」を組織した。この「土学クラブ」に登録している思春期・青年期自閉性障害者の余暇活動についての実態調査を行った。調査項目は,定期的な余暇活動の場の有無とその種類,不定期な余暇活動の場の有無とその種類,および余暇活動についての問題と要望であった。その結果,対象者の多くは,定期的な余暇活動の場,不定期的な余暇活動の場をもっていた。しかし,利用施設が限られていたり,家族等の同伴が必要であったりするために,その活動に制限が加わっていた。また,小数ではあったが,余暇活動自体をもつことが困難な対象者も存在しており,その問題についての家族の悩みがつづられていた。その一方で,それらの問題に対処するために保護者達がボランティアを集めて余暇活動グループを作っている事例も見られた。そのような活動に参加している対象者の中には,その活動を通して,集団に対する自発的な働きかけの増加と社会的スキルの向上を示したと思われる者もいた。 一方、「土学クラブ」に参加している思春期・青年期自閉性障害者を対象に余暇活動を実施した。実施した内容は,本人及び家族に対しおこなったアンケートの結果から,カラオケ,小旅行が選ばれた。小旅行では,対象者の中からカメラマンやレポーターを募り,対象者自身による余暇活動のレポートを会報とホームページに掲載した。写真を撮るのに声をかけてカメラに注目させたり,休憩中にノート型のパソコンを使ってレポートを作成したり,意欲的に取り組んでいた。実施した余暇活動において,非社会的行動を示す者もいたが,その一方で他の参加者や一般の人たちに対し自発的に働きかけるなどの日常生活では見せない自発性・社会性を示した者もいた。そのような行動は障害や遅滞の程度が軽度の者だけでなく重度の者においても観察された。余暇活動実施後,参加者自身と家族に対し,アンケートを実施した。今後の余暇活動に対する対象者自身の意見や要望も寄せられた。健常知能をもつ者だけでなく中度・軽度の遅滞をもつ者の中にも,アンケートその他で要望を伝えてくる者がいた。その一方で,単発ではない継続的な余暇活動の場の提供を望む声も寄せられた。 以上のように,思春期・青年期自閉性障害児者の余暇活動の実態と問題点が明らかとなった。また,余暇活動場面においても彼らの非社会性を指導する必要がある一方で,彼らの興味関心に基づいた余暇活動の企画・実施が彼らの自発性・社会性を促す可能性が示唆された。
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