1997 Fiscal Year Annual Research Report
感覚運動的・意味的制御過程における相互交渉リズムと自己制御リズムの統合メカニズム
Project/Area Number |
09710094
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
藤田 豊 熊本大学, 教育学部, 助教授 (60238590)
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Keywords | 感覚運動的制御 / 意味的制御 / 相互交渉リズム / 自己制御リズム / 自体操作 / 対象操作 / 発達 / 動作 |
Research Abstract |
本研究の目的は,平成8年度科学研究費の課題研究(課題番号08710100)の知見を踏まえて,3歳時から6歳時を対象に,(1)子ども自身の思考・運動のリズム(自己制御リズム)と他者との間で課題を介して共有されるリズム(相互交渉リズム)が,どの程度機能的な関係を持ち得るのか,様々な相互作用場面(感覚運動的,意味的要素を含む)を設定し,体系的に分析すること。(2)両者のリズムが子どもの中で容易に統合できない場合には,その原因となる要因を各制御段階(感覚運動的から意味的へ)ごとに抽出し,発達的特徴を明らかにすることであった。本研究では,まず,感覚運動的要素(言葉のリズム)と意味的要素(言葉の意味)および自体操作(自分の両腕の上げ下げ)と対象操作(指定された色の旗の上げ下げ)が課題構造に含まれる「旗上げ動作課題」を用いて検討した。その結果,(1)大人からのリズミカルな掛け声の意味は,子どもの全ての動作制御に対して有効に機能するわけではなく,「喚起」→「維持」→「抑制」の順に困難になる。(2)動作レベルでの制御の内容に注意を向けると,自体操作レベル(大人も子どもも同じ側に同じ色の旗を持つ)では,大人の旗の上げ下げに協応しながら,子どもは旗上げ動作の制御が容易に可能であるが,そこに対象操作的な関わりが含まれると(大人が旗の色を持ち変える),それまでの協応的な制御が崩れてしまう。(3)自体操作よりも対象操作の側面が強く反映されると,大人からのリズミカルな掛け声と動作的関わりは,子どもの旗上げ動作の制御を向上できず,子どもは自己の中で自体操作と対象操作を切り離し,言葉の意味に従って動作を制御することが非常に困難であることが示唆された。現在は,次年度に向けて,意味的要素が強く反映された「折り紙構成課題」を用いて,子どもの認知的動作的リズムと実験者の介入のリズムとの機能的な関係性について検討中である。
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Research Products
(1 results)