1998 Fiscal Year Annual Research Report
対人関係における葛藤が親密化過程と自己確証過程に果たす役割について
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09710102
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
下斗米 淳 専修大学, 文学部, 講師 (60226280)
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Keywords | 対人関係 / 親密化過程 / 自己開示 / 類似・異質性認知 / 役割行動 / 相互依存性 / 3位相 / 青年期 |
Research Abstract |
本研究では、「自己開示」、「類似・異質性認知」、「役割行動期待」の3事象が位相をなして対人関係を親密化させていくとする仮説(下斗米,1990,1991,1992,1999)の妥当性を検討することが目的であった。前年度においてこの最終位相である役割行動期待尺度の標準化と信頼性確認が図られ、親密化に伴う相互依存性レベルの差異が広範な年齢層において検出できるとの妥当性も認められた。そこでまず、残る自己開示と類似・異質性認知に関する測定項目を収集するために自由記述法による調査を行い、尺度化を図った。 対人関係の親密化過程が3位相から成立するとすれば、性別及び親密段階間を越えて3事象には同様な連関関係が検出できるものと想定される。この議論を踏まえ、これら3尺度間の関係性を検討するために、青年後期及び成人期の男女455名を調査対象とした質問紙調査を実施した。その結果、各位相において、男性では課題を介在とする相互依存性の構築が、一方女性においては親和欲求の充足を重視した相互依存性の構築が志向されている傾向が窺われた。しかしながら、男女ともに、いずれの親密段階にあっても、当該の対人関係が3位相を経て構成されていることが確認された。さらに、親密化過程においては、当該関係に固有の課題解決に機能的な役割行動が明確化されるに伴い、この役割行動の基礎としての異質性認知が重要視されてくること、また類似・異質性認知の材料とされる情報を収集する方途として、内面的な自己開示が促進されていく動態が、男女共通に見い出された。これらの結果に基づき、対人関係の親密化過程を、“自己開示の交換を通して徐々に明らかに認知し合った当事者間の類似・異質性に基づいて、現段階における課題解決に利する特定な役割行動を遂行するよう期待し合い、互いの相互依存性レベルを高め影響力を増していく過程"と捉えることの有用性と妥当性が確認できたと考えられた。
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