1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09710124
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
平田 暢 福岡大学, 人文学部, 助教授 (10238363)
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Keywords | 社会移動 / 都市化 / Uターン / 定住 / コミュニティ |
Research Abstract |
本年度の研究により、以下のような知見が得られた。(1)SSM調査的移動論と地域との関係について理論的・概念的整理を行い、都市化の進展は一定程度まで地域間格差と並行するが、より都市的機能が尖鋭化すると人の居住を排除し、必ずしも居住地の決定は地位達成過程と並行しないことが明らかとなった。地域居住は産業化の地域的表現としての都市化からは説明されない可能性がある。(2)対象地である秋田県鹿角郡小坂町の2次資料に基づく分析を行った。同町はかつての鉱業都市であり、産業構造の転換とともに現在では県内一人口流出率が高い一方、流入率も低くはなく、Uターンと定住をめぐる過程が存在し、社会移動を総合的な枠組みの中に捉え直すための条件を備えていることが確認された。(3)1995年に実施した住民調査からデータの再分析を行った。(1)現在小坂町に居住している住民の、コ-ホ-ト別の移動傾向を見ると、各コ-ホ-トともUターン者の転出は10歳代が、逆に転入(Uターン)は20歳代がもっとも多くなっており、しかも転入の絶対数は微増傾向にある。他方、他地域出身者の転入はやはり20歳代がもっとも多いがこちらは漸減傾向にある。(2)移動理由については、Uターン者に関しては、高校卒業後、教育機会、就業機会を求めて転出し、実家の都合や親の扶養を機に戻るというパターンが認められた。他地域出身者に関しては圧倒的に結婚を理由とするケースが多いが、70年代以降はよりよい住居を理由とするケースが増えている。(4)これらのことから、地位達成を理由とする居住とは別個の、定住志向とでも言うべき原理が働いていることが明らかとなった。次年度の課題は、(a)ライフ・イベントとの関係から移動を考察し、ライフ・スタイル獲得のプロセスを地域移動を軸にして追うこと、(b)定住を含む移動パターンから定住意識を分析し、定住とその裏面としての移動のメカニズムを明らかにすることである。
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