1997 Fiscal Year Annual Research Report
戦後日本における都市環境問題の発生構造に関する環境社会学的研究
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09710129
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
堀川 三郎 法政大学, 社会学部, 専任講師 (00272287)
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Keywords | 歴史的環境 / 都市計画 / 保存 / 環境社会学 / 観光開発 / 小樽運河 |
Research Abstract |
戦後日本の各地で展開された歴史的環境を保存しようとする運動(「町並み保存運動」)も,すでに20-30年の歴史を有するにいたった。都市計画や建築においても,歴史的環境保存は一定の理解と位置を占めるまでになってきたと言ってよいだろう。こうした「町並み保存」の運動は,過疎や未開発という状況を逆手にとって,保存の対象となる歴史的環境を観光資源としてとらえなおし,それをベースにした観光開発という戦略を提起した,と考えられる。 そうした運動の中でも「観光開発の優等生」と言われている北海道小樽市での小樽運河保存問題に関し,町並み保存運動参加者へのヒアリングと,問題とされた当該計画策定の経済の2回にわたる現地調査を実施した。1984年以降,単独で実施してきた現地調査の資料を大幅に利用し,さらなるヒアリング・データの収集に努めた結果,史上初めて,運河論争当時の市長への単独ヒアリングに成功したことをあげておきたい。。1997(平成9)年度は,この小樽調査を中心に据えて研究を行った。 こうした一連の調査は,成長促進型開発計画の対案として提示された観光開発の現在を調査・分析したと換言可能であり,言わば地域開発戦略の社会学的事後影響評価を行ったわけである。 主要な論点として,(1)観光開発という戦略を提起するまでの論争・対立過程がその後の意志決定過程に決定的な影響を与えていること,(2)観光客の大幅な伸びにも関わらず,小樽の歴史的環境は失われつつあり,「観光開発の優等生」イメージによる評価に過ぎない疑いがある,(3)運河保存運動の提起したものは単なる運河の保存ではなく,地域住民主導の都市環境の管理であった,などが浮き彫りにされた。 以上が1997年度(研究第1年度)の研究実績の概要である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 堀川三郎: "歴史的環境保存と地域再生" 船橋・飯島編『環境』(講座社会学第12巻),東大出版会. 第3章(近刊1998年6月予定).
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[Publications] 堀川三郎: "都市空間と生活者のまなざし" 石川淳志編『見えないものを見る力』,八千代出版. 第7章(近刊1998年9月).
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[Publications] 堀川三郎編著: "小樽市における歴史的環境保存と観光開発" 法政大学社会学部社会調査実習室, 240 (1998)