1997 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本におけるセクシュアリティの歴史社会学的研究
Project/Area Number |
09710132
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
赤川 学 信州大学, 人文学部, 助手 (10273062)
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Keywords | セクシュアリティ / 歴史社会学 / 近代日本 |
Research Abstract |
1,明治期から現在に至るまでに公刊されている、性に関する言説(医学啓蒙書、雑誌記事、手記、自伝など)をできる限り広い範囲から収集し、性欲論、マスターベーション、純潔、貞操、同性愛といったセクシュアリティの個別領域ごとに検索可能な目録を作成した。具体的に明らかにした知見は、以下の通り。 2,第一に、明治期に多く出版された「開化セクソロジー(西洋医学の輸入啓蒙書)」を収集し、そこに書かれていることの総体(エピステ-メ-)を把握しつつ、明治期セクシュアリティの特質を明らかにした。「情欲の性器還元説」と「三種の電気説」がその特質の中核である。 3,第二に、大正期から昭和初期に多く出版された「通俗性欲学」を収集し、そこに書かれていることの総体(エピステ-メ-)を把握しつつ、大正期セクシュアリティの特質を明らかにした。「性欲の男女非対称」と「性欲の善導パラダイム」がそれである。 4,第三に、近世期から1980年代までの、オナニ-(マスターベーション)に関わる言説を収集し、その形成と変容の過程を明らかにした。特に、開化セクソロジーにおける「オナニ-有害論」が、近世期の「養生訓パラダイム」に接合する形で形成されてきたことを明らかにした。 5,第四に、明治末期から昭和前期における「性欲」の社会的意味形成の過程を分析し、それが「性欲=本能論」と呼ばれるべきものであることを明らかにした。また性欲の統御、つまり「性欲をどのような性行動によって満足させるべきか」という問いが社会的な規模で問題化され、「性欲のエコノミー問題」が登場することを確認した。
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