1998 Fiscal Year Annual Research Report
災害復旧・復興の法・制度運用・新規創設課程に関する実証的研究〜コミュニティ再興と生活再建における「住」環境整備の側面から〜
Project/Area Number |
09710150
|
Research Institution | Edogawa University |
Principal Investigator |
大矢根 淳 江戸川大学, 社会学部・応用社会学科, 専任講師 (80281319)
|
Keywords | 災害 / 生活再建 / 被害想定 / 阪神・淡路大震災 / 雲仙普賢岳噴火災害 |
Research Abstract |
阪神・淡路大震災を扱う社会学的災害研究は、日本社会学会メンバーを中心に『阪神・淡路大震災の社会学』(全三巻)(昭和堂,1999)としてとりまとめられた(大矢根は第3巻第一論文執筆)。そこでは被災直後あるいは短・中期的状況を精査(人、社会の諸対応および各種問題点の指摘)し、あるいはもう少し研究の時間軸を延長して長期的復興(復興まちづくり)を扱っている。しかしながら、災害現象を日常性の一つの投影として把握するとか、長期的社会変動の産物として、また、そうした変動を加速する一因であると把握するような認識は低調である。 本研究では、災害復旧・復興過程のうち、被災者の生活再建の中核をなす「住」生活再建問題に関して、特にその法制度的諸側面(制定・運用過程)に力点を置いて、諸外国の先行研究の論点を参照しながら、同時に、国内被災各地の関連事象・課題を既存資料・新規実査等から把握して、我が国の被災の態様(特に「住」生活再建分野)を解明してきた。そこで得られた知見は以下の通りである。 (1) 同じ災害因による被災も、その歴史的・社会的・経済的背景、当該社会の危機管理意識・システム、当該地域の防災文化蓄積・風化の程度等で規定される「防災力」により、その態様は様々である。 (2) 発災時〜復旧・復興期に拠り所とされる法制度は、その平常時の解釈・援用の延長上に位置する(「復興に都市計画事業が主に採用される」「被災者の個人補償はなされない(自力復旧主義)」など)。 (3) したがって被災を綿密にシミュレーションすれば、その延長上に生活再建の課題は先取りして認織されうる(先例を教訓に法制度の弾力的解釈の幅が広がる。例えば「仮住居家賃補助」や「仮設住宅の生活環境整備」など)。 そこで、それらシミュレーションを前提に構想されている諸外国の防災システムを検討する中から導出され、我が国防災行政に援用され始めた「シナリオ型被害想定」の手法を紹介し、それをわれわれの日常生活単位であるコミュニティの防災に取り込むロジックの検討に着手し、それを今後の研究課題として位置づけた.
|
Research Products
(4 results)
-
[Publications] 大矢根淳: "生活再建概念の内省的再考" 『情報と社会』(江戸川大学). 第8号. 39-51 (1998)
-
[Publications] 大矢根淳: "コミュニティ防災の新たな展開に関する一考察" 『情報と社会』(江戸川大学). 第9号. 37-49 (1999)
-
[Publications] 小坂勝昭: "社会学テキストブック" ミネルヴァ書房(出版作業中につき未定), (1999)
-
[Publications] 岩崎信彦: "阪神・淡路大震災の社会学(第3巻:復興・防災まちづくりの社会学)" 昭和堂, 368 (1999)