1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09710156
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
斎藤 友里子 奈良女子大学, 文学部, 助教授 (80278879)
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Keywords | 公平 / 公正 / 規範 / 数理モデル |
Research Abstract |
本研究の目的は、(1)規範意識の普遍化を説明する理論(数理)モデルの構築とそれに基づく公平評価モデルの拡張と、(2)上記モデルに関する経験的検証の2つに分かれる。これに対応して、本年度中に進めた作業も理論的作業と経験的検証の準備作業の、2つに大別される。 経験的検証のための準備作業として、本年度は質的資料の収集に着手した。具体的には、「朝日新聞戦後50年記事見出しデータベース」を中心に、「公平」や「公正」といった、関連する字句を持つ記事の探索・コピーを行った。この作業は現在も続行中である。さらに、これら質的データとは別に、利用可能な調査データを用い、規範意識の普遍主義性と職場の異質性をからめた分析に着手している。職場の異質性の操作化にさらに工夫が必要と思われるが、質的データ分析と計量分析との併用によって本研究で構築しようとするモデルをロバストなものとすることができよう。 上記の経験的な作業と並行して、慣習的ルールから普遍的ルールへの推移を社会の異質化・多様化から説明する、数理モデルを構築するための概念枠組みの準備を進めた。主にこれは、公平性をめぐる規範意識をとらえる軸に関する理論的整備と、価値としての「正義」の社会学的特質に関する考察に関連している。略述すれば以下の通りである。価値としての正義の社会学的特質は、人々の行為を制御する末端ルールの正当性が、制度を基礎づける理念(=正義)に依拠することに起因して立ち現れる革新性に求められる。理念に依拠した異議申し立ての範囲は、理念が抽象化されることによって拡大すると考えられるが、抽象化は従来なかった問題の発生を契機とすると考えられる(異質性がここに関わる)。このプロセスは、人々の規範意識が多次元空間のどこに位置づけられるかにより操作化可能と思われる。
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