1998 Fiscal Year Annual Research Report
要介護高齢者の家族における介護ストレスへの対処行動の精神的健康に及ぼす効果
Project/Area Number |
09710162
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
岡林 秀樹 東京都老人総合研究所, 保健社会学部門, 研究員 (90281675)
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Keywords | 介護ストレス / 対処行動 / 精神的健康 / 要介護高齢者 / 家族介護者 |
Research Abstract |
介護ストレスに対して介護者がとる対処方略が、介護者自身の精神的健康にどのような影響を及ぼすかを検討した。我が国において、対処方略の精神的健康に対する影響は横断調査によっていくつか研究されているが、横断調査のみでは因果関係の方向性を特定できない。本研究では、縦断調査に基づいて、対処方略の5因子と燃えつきとの双方向の関係を検討し、因果関係の方向性の特定を試みた。東京都三鷹市の65歳以上の高齢者全数21,567人からスクリーニングした要介護高齢者1,379人の介護者を対象に1995年4月に訪問面接調査を行い、943人に調査を完了した。本研究の分析対象者はこれらの介護者を1年後に追跡調査して有効回答の得られた541人である。介護ストレスに対する対処方略は「介護に対するペース配分」「介護役割の積極的受容」「気分転換」「私的支援追求」「公的支援追求」の5因子(全16項目)から構成された。介護者の燃えつきは中谷(1992)の家族介謹MBIの下位尺度である「情緒的消耗」(8項目)と「離人化」(4項目)によって測定した。初回調査における高齢者のADL障害と認知障害、介護者の続柄、年齢、学歴、経済満足度は統制変数として用いた。対処方略の各因子と燃えつきの各下位尺度とのそれぞれの関係を縦断データの分析手法であるSYNCHRONOUS EFFECTSモデルによって分析した。分析の結果、対処方略と「情緒的消耗」との関係では、「介護におけるペース配分」と「介謹役割の積極的受容」は「情緒的消耗」によって減少させられた。「気分転換」は「情緒的消耗』を減少させ、「情緒的消耗」は「気分転換」を減少させるという双方向の関係がみられた。対処方略と「離人化」との関係では、「介謹役割の横極的受容」のみが「離人化」によって減少させられた。「私的支援追求」と「公的支援追求」は燃えつきの2因子と有意な関係はみられなかった。これらのことから「気分転換」という対処方略のみが燃えつきを減少させる効果をもつことが明らかになった。
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