1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09710175
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
加藤 毅 筑波大学, 社会工学系(大学教育センター), 講師 (10233800)
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Keywords | 研究者養成 / 民間助成財団 |
Research Abstract |
若手研究者の養成という政策課題に取り組むにあたり、1.職や処遇というストック部分に着目したアプローチと、2.研究費というフロー部分に着目するアプローチがある。ストック部分に着目し助手の処遇や特別研究員の終了後キャリアの分析を行った昨年度の研究成果を踏まえ、今年度は、若手研究者を対象とした研究助成について、民間助成財団をフィールドとして検討を行った。主たる結果とインプリケーションは次の通りである。 多くの理系の研究分野では、大学院生やポスドクなどの若手研究者は研究室や講座を単位とする研究グループの一部分となっている。そのため、本来は若手研究者個人を対象としている研究助成金が実質的に研究グループ全体の研究資金とされている例も少なからず見られる。そもそも、特に高価な装置や機器を研究グループで共有しているような研究分野では、少額の研究助成金が申請者の主体的な研究活動を可能にするとは考えにくい。かりにグループ研究への従事が若手研究者にとって不可欠のOJTであるとするならば、優秀な指導者のもとで研究活動を行うことこそが重要であり、そのためには、若手研究者の流動性の向上や優秀な指導的立場の研究者の学術研究環境の改善など、多くの周辺条件の整備が不可決なのではなかろうか。 人文社会分野全般に対して研究助成を行う民間財団では、複数の異なる分野の研究者が審査員となっているケースがある。一般に若手研究者が研究計画の段階で「新規な方法論」をアピールすることは非常に困難であり、特に専門分野外の研究者に対しては、どうしても「未知のフィールド」である点が強く印象づけられることになりがちである。文化人類学における特定地域のフィールドスタディや、建築学における特定の地域・時代の建築物を対象とする研究などがこれに該当する。実際には1〜2年という短い助成期間ではデータ収集に終始するケースも多く、助成期間終了時においてさえも、研究計画の評価は難しい。また、人文社会分野では、理系の分野とは異なり研究指導が行われることが少ない。若手向けの研究助成においては、研究資金だけではなく優れた専門家による研究内容に関するアドバイスの提供などについても考えられてよいのではないか。
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