1997 Fiscal Year Annual Research Report
欧米家政学の受容による近代日本の家政学と女子教育の形成における死角と限界-柳田民俗学の生活的視点からの批判的検討-
Project/Area Number |
09710211
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Research Institution | Otani University Junior College |
Principal Investigator |
関口 敏美 大谷大学短期大学部, 講師 (60241212)
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Keywords | 家政学 / 家事教育 / 家事の近代化 / 家庭改良 / 婦人改良 / 主婦 / 女子教育 |
Research Abstract |
本研究の目的は、社会的な視野から生活問題の解決をめざす「社会家政学」を提唱した柳田國男の問題提起を受けて、近代日本の家政学と女子教育の形成における特性をその死角や限界も含めて考察することである。そこで本年度は、(1)明治前期から昭和初期にいたる近代日本の家政書の分析を通して、日本家政学・女子教育の特性を解明すること、(2)翻訳家政書にみられる欧米家政学からの影響の分析を通して、受容のされ方、受容されたものの特質を解明するこの二点に関す基礎的な作業に重点をおいた。 先行研究によれば、明治期以降の家政書には、(1)家事教育、(2)家政学、(3)女性の教養、を目的としたものがあるが、家事教育と家政学との区別があまり明確ではないことが指摘されている。これは、家政を対象とする学問研究が確立される前に、女子教育において家事教育を実施する必要が生じ、家事教育の研究や指導者養成を目的として家政学が展開されていったことに関わりがある。近代日本の家政学が成立してゆく背景には、家族と女性をめぐる社会意識の変容があり、その結果、「良妻賢母」という女性像が要請されて女子教育が整備されてきた経緯がある。この意味で家政学は、特に明治20年〜30年頃に国家の基礎単位である新しい家族(=家庭)を創出する過程で、その担い手とさた女性(=主婦)が学ぶべき、家事に関する新しい学術技芸として誕生したと考えられる。明治期に登場する家政学の特質を指摘すると、(1)明治中期以降、家政の担い手が女性=主婦に限定され、(2)子を教育する「母」役割が強調され、(3)衛生(健康管理)と経済(家系管理)を重視する家庭管理が主張されたことである。また翻訳家政からの影響として考えられるのは、(1)欧米市民社会の女性観・家庭観の影響、(2)「教育する母親」像の影響、(3)科学的な専門知としての家政学観の影響、などがあげられる。
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