1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09710231
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
川田 牧人 中京大学, 社会学部, 講師 (30260110)
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Keywords | 南島研究 / 沖縄 / 伊豆七島 / 山原船 / 海上交通 / 物忌行事 |
Research Abstract |
今年度は、まずこれまでの南島研究、伊豆研究の成果に関する文献収集および整理をおこなった。これにもとづき、南島研究、とくに沖縄本島の研究に関しては世界観研究など、島世界を大枠でとらえる視点が研究の大半を占めていることから、現地調査にあたっては島民の実質的な日常活動を押さえた上で世界観研究とリンクさせていく方向性を探った。この点で興味深いことは、昭和初期まで、山原船とよばれる物質運搬船が国頭から島尻、ときには奄美や宮古・八重山まで航行していたことである。山原船はまた平安座船とも呼び慣わされることからもわかるとおり、その製作の中心は与那城村平安座島であり、物資運搬に携わる人々も勝連半島に集中していた。この物資運搬の流れは、平安座出発→山原で材木を採取、一泊→平安座帰港、一泊→与那原、佐敷などの島尻地方、また糸満・那覇へ材木を運搬→日用品を仕入れ、帰りの風を待って出発→平安座帰港、といったものであった。今年度の調査により、今後の山原船の調査地として、平安座島、与那原町、また西海岸では読谷村比謝橋などが有力であることが確認された。いっぽう伊豆諸島調査においては、これまで年中行事などの儀礼伝承にかんする資料蓄積があるものの、本研究で課題としている伝承を担う個人レベルでの儀礼シンボルの運用など、ミクロな視点からの民間知識に関しては蓄積が少ないことなどから、空間に関する個人の儀礼的経験を微細に調査することをめざした。日程の関係上十分な時間がとれなかったものの、神津島において二十五日様に関する聞き書きをおこなった。伊豆諸島全般には日忌様、カンナンボウシ、カイナンボウシなどと呼ばれる物忌み行事が分布しているが、七島の開発にともない、その儀礼の変容は多様である。この開発の現状と、儀礼的経験の偏差を記述することが来年度の課題である。
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