1997 Fiscal Year Annual Research Report
近世日本の宗教者組織とその編成にみる身分・宗教・社会の研究
Project/Area Number |
09710244
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
西田 かほる 学習院大学, 史料館, 助手 (50265576)
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Keywords | 神職 / 陰陽師 / 御師 / 本所 / 宗教 / 芸能 / 神子 / 甲斐 |
Research Abstract |
近世における宗教者の編成を知るためには、宗教者の本所について検討する必要がある。まず、本年は神職の本所である神祇伯白川家の史料の分析を進めたほか、陰陽師の本所である土御門家の史料を調査した。これによって、甲斐国における両宗教者の特徴や編成のあり方が具体的になってきた。 例えば年頭の門付などを行なう芸能的宗教者の万歳は、従来より陰陽師の配下にあることが知られていたが、甲斐国の万歳もかなり早い段階で陰陽師の小頭に統率されていたことが、土御門家の日記を検討する中で確認できた。 また、本年は甲斐国の宗教者のうち、富士山御師、その中でも川口御師(現河口湖町河口に集住していた御師)に注目した。富士山御師は、山岳霊場の一つである富士山に登拝する信者の宿泊や案内をはじめ、祈祷などを行なう宗教者であるが、川口御師家の文書では、神祇管領長上吉田家と神祇伯白川家という二つの本所に関する史料が、かなり長い期間にわたって同時に残されていた。これは一御師家が二つの本所に編成されていたかにもみえ、御師の身分を考える上で大変重要な検討課題となった。また、富士山御師の在地での活動は、単に富士山の護符を配り歩くだけではなく、神拝式などを伝授したり、本来御師の職掌にはない姓名判断をしたりしていたこともわかり、在地の檀那の幅広い要望に答えていることもわかった。 甲斐国以外では、隣国の信濃国の神事舞太夫などの史料を収集した。神事舞太夫(江戸田村八太夫配下)と夷太夫(播磨国西宮配下)の職掌をめぐる争いや、両者の妻である神子について検討し、両者の類似性を再確認した。神子は信濃国だけではなく、知多や越後から嫁いできたものも多く、三河万歳や越後獅子舞などの芸能者との関係も視野に入れ、今後とも検討を重ねたい。
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