1998 Fiscal Year Annual Research Report
近世における融通念仏信仰の実態に関する調査・研究-大和国を中心に-
Project/Area Number |
09710252
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Research Institution | Osaka Municipal Museum of Art |
Principal Investigator |
大澤 研一 大阪市立博物館, 学芸課, 学芸員 (40191936)
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Keywords | 融通念仏 / 民衆信仰 / 大和国 / 宗旨改 / 葬送 / 墓地 |
Research Abstract |
研究課題について、本年は以下の二点に関する調査・研究・成果報告を実施した。 (1) 本課題は近世大和国における融通念仏信仰の展開の解明を目的としているが、それを明らかにする前提として、昨年は中世段階での同国における融通念仏信仰の実態について検討した。本年も融通念仏信仰の展開の全体像を視野に入れておく必要から、17世紀の融通念仏宗の成立過程に関する調査・研究をまず行った。具体的には本山大念仏寺所蔵の文書調査・研究を継続し、17世紀中期の舜空上人期の教団の動向について明らかにした。その成果は「融通念仏宗成立期における舜空期の意義」と題して論文化し、『融通念仏信仰の歴史と美術』論考編(東京美術発行 平成11年5月刊行予定)に収録される予定である。なお、昨年度の調査・研究をまとめた成果である「融通念仏宗の大和国における勢力伸張について」は、『法明上人六百五十回忌記念論文集』(大念仏寺刊、平成11年10月発行)に収録・発行された。 (2) 昨年度の研究実績において、本年度の課題として掲げた末寺寺院の成立動向の検討については、昨年度写真撮影を実施した大念仏寺蔵の末寺帳の分析をおこなった。その結果、大和国における末寺は中世段階では多様な宗派に属する寺院・寺庵が多く、それが宗旨改制度の整備のなかで、融通念仏宗寺院として「成立」していく様子が判明した。しかし、教団自体の成立が元禄に下るため、末寺の宗派性も不安定なものであったことがわかった。末寺寺院組織の背景と中近世移行期の民衆信仰の動向の関連という課題については、融通念仏信仰が近世段階でも民衆信仰として息づいている信州地方との比較検討が有効であると判断し、史料調査を実施した。現段階ではその成果を充分深められていないが、独立した教団とはならなくても信仰され続ける融通念仏信仰の根強さ・奥深さが窺えた。
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Research Products
(2 results)