1998 Fiscal Year Annual Research Report
張作霖政権時期(1916-28年)を中心とする中国東北地方の近代史
Project/Area Number |
09710256
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
長井 由里 (澁谷 由里) 富山大学, 人文学部, 助教授 (80283050)
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Keywords | 張作霖政権 / 張学良政権 / 清末新政 / 間島問題 / 万宝山事件 / 中国東北地方近代史 |
Research Abstract |
今年度も引き続き、張作霖政権の財政基盤と軍隊・警察制度との関連性について研究する一方、張学良政権(1928-31年)に関する初歩的研究に着手した.前者については購入した『泰系軍閥档案資料彙編』などの読解を進め、また東京の外務省外交史料館などでの調査の結果、清末新政期における各為政者の地方財政創出の努力と、日本やロシアに対抗しうる治安維持能力の再編が不可分の関係にあり、清朝全体で東北地方に改革の優先権があったため、新設の東三省総督に大きな権限があり、それが張作霖政権を生む土壌になっていることが判明した.清末民初に多発する抗損の動きも、警察と税捐局が一体になった強制的で無秩序な徴税への反発であり、末端では官民の間で新たな徴税ルールが模索されていたこともわかってきた.これらについては、「清末民初期における奉天省の財政問題」 (仮題)として論考を準備している.張学良政権に関しては、日本と対立を深める要因の一つとなる朝鮮問題を中心に研究を始めた.一つは従来封禁地であった間島地域に対して、封禁の緩んだ清末・光緒年間から、中国・朝鮮・日本・ロシアがその帰属を争って決着がつかず、一種の無法地帯と化し、朝鮮での抵抗運動家が逃げ込んで、その取締を求める紛争が日中間で起ったのを、購入した『外務省警察史』などで年代順におっている.もう一つは、間島問題にも関連するが、中国人と朝鮮人の農民間の紛争に日本が介入して、張学良政権との決裂を決定的にした万宝山事件についてである.張作霖政権との関係は、間島問題の継続性や警察の性質などを通じて明らかにできると考えている.この角度からの研究は、管見の限りなかったので、中国東北地方の近代史に新たな展望を開けるものと思われる.
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